【メインストーリー第72話】救難信号
〇戦車の墓場
クローズ
「…『死神』がお前の魂も狩ってやるよ。」
オフィサー
「おい…!私の話を聞いッ…!」
ドウォンッ!!
禍々しい主砲から発射された砲弾が
船長の乗る戦車を目掛けて飛んでいく。
オフィサー
「…くそッ!間に合うかッ!」
シュヴァルツレーヴェから発射されたATミサイルが
クローズの放った砲弾目掛けて飛んでいく。
ドゴォオォォン!!
ミサイルは見事迎撃に成功し、
攻撃を無力化した。
フェロー
「おお~!危ない危ない!
船長やるじゃん!」
クローズ
「フッ…。腕は落ちてないようだな。」
オフィサー
「はぁ…はぁ…。クローズ…私の話を…。」
クローズ
「…今更お前の話など聞いてどうなる。
過去は変えられないんだ。」
オフィサー
「…クローズ。」
クローズ
「悔いたまま朽ちるがいい。」
禍々しい主砲に赤い光が集まっていく…
と、その時。
ダダダダダダッ!!
バババババッ!!
シュン
「うおおおおおッ!!」
バルドゥール
「バウッ!バウッ!バウッ!!
砲弾が切れている為、副砲で応戦するシュンと
必死に抵抗するバルドゥール。
フェロー
「おお~、ワンちゃん!やるぅ~!
…苦手だけど…。」
クローズ
「…蚊にでも刺されたか?
そんなんじゃ俺の戦車は壊せないぜ!」
赤い光が集まっていき、主砲の砲口に収まった瞬間
ドグワォンッ!!
禍々しい主砲から発射された砲弾が
船長の乗る戦車を再び目掛けて飛んでいく。
フェロー
「船長!!危ない!!避けてッ!!」
クローズ
「これでさよならだ、黒獅子ッ…!」
オフィサー
‥!!
ドゴォオォォン!!
クローズの放った砲弾は
シュヴァルツレーヴェに命中し大爆発を起こした。
エリシア
「船長さんッ!!」
シュン
「…オフィサーッ!!!っくそッ…!!」
シュンはすぐさま戦車から降車し、
船長の戦車に駆け寄ろうとするも
炎上した火の勢いが強くて近づけない。
シュン
「おい!消火器!消火器は無いか!!!」
フェロー
「消火器!?え~っと…。確か…
あっ、あった!!!」
消火活動にあたり、ようやく鎮火した
戦車から船長を引きずり出したが、
致命的な傷を負っており、意識が無いようだ。
オフィサー
…。
シュン
「良かった…。心臓はまだ動いているな…。」
フェロー
「良かった…。生きてた…。」
エリシア
「…ユルサナイ…。」
フェロー
「…エリシアちゃん…?」
エリシア
「船長さんを…!!…ユルサナイ!!」
エリシアの左腕の紋章が光り
左目の色が黄色に変わった。
ドゴォン!!
禍々しい主砲から発射された砲弾が
エリシアを目掛けて飛んでいく。
シュン
「エリシア!危ない!!」
エリシアの左腕の紋章が強く光り、
クローズの放った砲弾はあらぬ方向へと飛んでいき爆発した。
ドォォォオン!
エリシア
「…脅威ヲ排除。」
クローズ
「砲弾の弾道を曲げた…?
ほう…。こいつは面白い。
しかし、次はそう上手くいくかな。」
ブラックレイヴンの後方に配備された
鳥の形をしたランチャーがくるりと回転した後
バシュン、バシュン、バシュン、バシュン!
無数の小型ミサイルがエリシア目掛けて飛んでいく。
エリシア
「…愚カナ…人間ヨ…。」
エリシアの黄色の目が強く光ると
先程まで飛んでいた小型のミサイルが空中で静止した。
クローズ
「なん…だと…。」
フェロー
「えっ…!?ええっ!?
エリシアちゃん、どうやったの?!」
エリシア
「滅ビルガイイ…!!」
左腕の紋章が強く光ると
さっきまでエリシアを狙っていた小型のミサイルが
方向を変え、クローズ目掛けて飛んでいった。
クローズ
「うおおおおおおおおお!!!」
ドガン、ドガン、ドガン、ドガーン!!!
方向を変えた小型ミサイルは
ブラックレイヴンに全弾命中し大爆発を起こした。
エリシア
「目標:クローズ、…排除シマシタ。」
…。
エリシアはその場で崩れ落ちた。
フェロー
「エリシアちゃん!大丈夫!?
無理しちゃダメって言ったのに!」
エリシア
「フェロー…さ…、ごめ…んなさい…。」
エリシアの目を見ると元の色に戻っており
紋章も小さい光を放っているが、
どうやら正気を取り戻したようだ。
オフィサー
「うッ…!う~ん…。私…は…負けた…のか?」
シュン
「ん?オフィサーが目を覚ましたぞ!
エリシアさんが、クローズを…!」
オフィサー
「エリシア…くんが…?」
ザッ… ザッ… ザッ…
激しく燃えた煙の中から
黒い人影のようなものがこっちへ向かってくる。
クローズだ。
クローズ
「ハァ…ハァ…やるじゃねぇか…。
まだ…終わって…。」
オフィサー
「クローズ…、もう終わりにしないか…。
私は…あの時。お前を救えなかったことを
ずっと今まで後悔し続けてきた。」
クローズ
「黒獅子…。」
オフィサー
「…あの時…。」
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(回想)
エルピス作戦の布陣は、3つの部隊に分かれた。
コードネームは『カイン』『アベル』『セト』
パンドラ内部への突入は『カイン』の2部隊。
先陣は『亡者(ネクロ)』、後方支援に『櫻花』と白兵戦主体の部隊で構成されていた。
『アベル』の『黒鴉(レイヴン)』、『セト』のカンパニー、傭兵達は
パンドラ付近に出現する『リンドヴルム』や『エリミネーター』などの
討伐にあたっていた。
黒鴉と腕ききの傭兵達は『リンドヴルム』を担当。
私達やカンパニー、傭兵達は『エリミネーター』や付近に出没する
『パープルデス』などのモンスターを担当していた。
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クローズ
「そしてリンドヴルムのブレスによって
俺達黒鴉は約半数を失い壊滅状態になった。
もちろんだが、傭兵達もほぼ死んでしまった。
フェロー
「そんな…、酷い…。」
クローズ
「そして俺達『アベル』は救難信号を黒獅子のいた『セト』に
送るが反応は無し…。
その後、リンドヴルムを残りの戦力で瀕死にさせるも
ヤツのダークネスフレアで全滅し、跡形も無く消え去ったというわけだ。
何故、あの時お前たちは助けに来なかった…!」
オフィサー
「…そもそも救難信号すら届いていなかったのだ。」
クローズ
「嘘を付け!!そんなはずは無い!!」
オフィサー
「いや…そもそもグラウンド・ゼロの中心部は
フェロー君達ならわかるとは思うが、磁気嵐の電波障害による
ジャミングがひどく通信がまともに出来ない状況なのだ。」
フェロー
「確かに…。エンジニアの『キャンセルくん』があったから
あたしたちは大丈夫だったけど…。」
クローズ
「それは…、本当なのか…?」
オフィサー
「ああ。もし仮にあの時信号が届いていたとしても
我々もエリミネーターやモンスター達に苦戦を強いられており、
すぐに助けに行くことができなかったと思う…。」
クローズ
… …。
オフィサー
「その後、我々が駆け付けた際は、すでに遅かった…。
なんとか瀕死のリンドヴルムは倒したが…助けてやれなかった…。
今更許されるとは思ってはいないが…本当にすまなかった…。」
シュン
「オフィサー…。」
クローズ
「…そうか。憎むべき対象を…
俺は勘違いしていたようだ。」
オフィサー
「…誰にでも勘違いはある。
しかし、また会えてこうやって話せて良かった。
これでようやく胸のつかえが下りたよ。」
クローズ
「ああ、俺もちゃんと話せて良かったよ。」
そう言い残すと
クローズは煙のように消えた。
そして、周囲一帯に立ち込めていた霧も晴れていった。
フェロー
「あっ…。消えた…。」
オフィサー
「クローズ…。」
チャリーン…!
何かが落ちるような音がした。
シュン
「ん…?何かクローズがいたところに光る物が…。」
シュンが指さす方向を見ると
頭の部分にノア=アイのレリーフが入った赤色の鍵が落ちていた。
フェロー
「あっ!鍵だ!!
クローズが持っていたの…かな?」
オフィサー
「わからないな…。
ただ、彼も元新統合軍の軍人だ。
何か関係があったのかもしれないな…。
今となってはもう…わからないが。
…そうだ!エリシア君は大丈夫か?!」
フェロー
「うん、眠ってるね。
紋章ももう光ってないみたい。」
オフィサー
「そうか…。今回もエリシア君には
助けられたな。いつも無理させてすまない。」
シュン
「さて、これからどうする?
鍵は一応手に入ったが…。」
フェロー
「ん~、流石にシュンくんの砲弾も切れちゃってるし
船長の戦車も大破してるしね…。
エリシアちゃんもドクターに診てもらわないと…。」
オフィサー
「そうだな。では、日が暮れないうちに
今日はここまでにしておいてランドシップに戻ろう。
シュン君牽引をお願いできるか?」
シュン
「了解です。準備してきますね。」
フェロー
「あたしも手伝うよ~!
フェローちゃんにお任せあれ!」
オフィサー
… …
(後は私に任せて、ゆっくりと眠ってくれ…。クローズ。)
To Be Continued…
2020年2月18日10:28