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時代の変化にどう対応する!?(3)

サクセスとオンラインゲーム

――スマホアプリの開発にはオンラインゲームの技術が必要ということですが、サクセスがオンラインゲームを手がけたのはいつごろのことだったのでしょうか?

吉成 2001年になります。サービスを開始したのは韓国のオンラインゲーム『リネージュ』と同じ月なので、サクセスのオンラインゲームの歴史も長いんですよ。

――『リネージュ』というと、韓国ではあまりの人気ぶりにリアルマネートレードや詐欺事件などの社会問題まで引き起こし、日本でもけっこう報道されていましたよね。

吉成 当時すでに高速インターネットのインフラが整っていた韓国で、オンラインゲームの巨大なマーケットを切り開いた作品ですね。日本でいうとインベーダーみたいなものでしょうか。

――日本ではまだ高速インターネット環境が十分に整っていなかったこの時期にオンラインゲームをスタートしたきっかけを教えてください。

吉成 韓国人の知り合いから韓国のゲーム事情を聞いたのがきっかけでした。彼の話で韓国国内のオンラインゲーム人気を初めて知り、さっそく取り掛かったんです。最初はオリジナルではなく、韓国から買い付けた作品をローカライズして日本でサービスを開始しました。当時、韓国にはたくさんのオンラインゲームがあったので、買い付けるタイトルには事欠きませんでした。 のちにオンラインゲーム事業部門を分離して、一時期うちの株主だったベクターに譲渡したので、今は当時のゲームの運営に関わっていませんが、当時始めたMMORPG『GODIUS』など、今もサービスが続いています。

――このときのオンラインゲーム開発によって、具体的にはどういった技術を培ったのでしょうか。

吉成 おおまかに言うとサーバーの設計技術と通信技術ですね。そしてこのふたつが、ガラケーやスマホのゲームには不可欠なんです。  

世界の潮流と日本市場

――サクセスはオンラインゲームをいち早く始めてこの2つの技術に習熟していたことで、大きなアドバンテージを得たのですね。

吉成 コンシューマーゲームとスマホゲームでどこが違うかというと、じつはほとんど同じなんですよ。ディスプレイに絵を表示する、音を鳴らす、コントロールの方法・・・インターフェースが多少違っても、やることはどれも同じです。違いがあるとすれば、スマホゲームの場合にはサーバーを介してデータを読み込んだり、サーバーにデータを蓄積したりするだけなんです。 サーバーの設計は、サーバーにプログラムを組んだりデータベースを構築したりといった技術が必要ですが、そんなものはゲームを作る技術からすればどうってことありません。秋葉原に行けば、ソースコードの付いた専門書が簡単に手に入ります。それなのに「自社にサーバー設計の技術がいない」「通信の技術がない」と言って新しい市場に移行しようとしない会社もけっこう多かったですね。

――スマホゲーム市場がここまで急速に拡大するとは、4、5年前には予想できなかったのかもしれません。一方、コンシューマーゲーム市場は本当に元気がなくなりましたね。

吉成 ゲーム業界の同業他社を見渡しても、いまPS4やXboxのゲームを作っている会社は片手で足りる程しかありません。大手ゲーム会社ですらコンシューマーゲームを放棄したり、アーケードゲームから手を引くと公表しているところが多いのですから。

――日本でPS4が発売されて2年以上が経ちますが、プレイしたいタイトルが出てこないためにPS4本体を購入していないというライトユーザーが多いのではないでしょうか。

吉成 PS4は日本に先駆けて海外で販売されたのですが、総売り上げ台数が300万台に達するスピードはPS2をしのぎ、過去最速のペースでした。ところが、世界での総売り上げが4000万台を突破した今でも、日本国内での売り上げは300万台に満たないという状況です。 海外でこれほど好調なPS4が日本ではさっぱり売れないのは嗜好性の問題でしょうね。日本のゲームユーザーは、海外よりもずっと先に行っちゃってますから(笑)。  

第6回03『GODIUS』の画面写真
サクセスが初めて手がけたオンラインゲーム『GODIUS』。

 

吉成社長のつぶやき(21)

インターネット先進国と言われていた韓国の人気ゲームをいちはやく買い付けたことで、日本国内のオンラインゲーム市場でもリードできたのでは? 『そう上手くはいかなかった。だけど、今もサービスが続けていられるのは固定ファンがいるからだろうね。いうなれば「五反田の場末の、長く続いている飲み屋」みたいな、そんなイメージかな(笑)』

サクセスの企業風土(1)

創業時は2人だった社員もいまでは260人を数える。社長室の壁に掲げられた大きなホワイトボードには、サクセス全社員の顔写真と名前が記されており、部門ごとにカテゴライズされ、色でスキルがわかるようマーキングされている。そして、吉成社長はその全社員の顔と名前を把握しているという。

こいつらの将来は大丈夫か?

――過去に在籍していた方も含め、社長の目から見たサクセス社員の印象を教えてください。

吉成 これまで何百人という社員を見てきましたが、総じて変人が多いかな。まだ社員が2人しかいなかった創業時にいっしょに働いていた奴からしてとんでもない変人で、一緒にやっていけるか不安に感じたくらいですしね(笑)。 これまでお話してきた通り、サクセスはゲーム以外のソフトもあれこれ作ってきましたが、その中にはうちの社員の姿を見て思いついたソフトもけっこうあるんですよ。1988年に発売した『ライフデザイナー』というパソコン用ソフトもそのひとつです。

――『ライフデザイナー』とは、何のためのソフトなのですか?

吉成 要は「人生設計をしましょう」っていうソフトウェアですね。

――なるほど。ゲーム会社は技術者の方が多いですし、ライフプランの設計もきっちりやっていそうですもんね。

吉成 いいえ、その逆ですよ(笑)。 開発を思い立った当時は社員が10人もいなかったんですけど、まず出世欲のある奴がいないし、生活がメチャクチャな奴も多かったんです。人生の目標とか将来像をまるで考えていないような社員たちを見ていたら「このままで、こいつらの将来は大丈夫なのか?」って心配になってしまって、それで人生設計をサポートできるようなソフトを作っちゃったんですよ。

――そうだったんですか! 開発の裏には、社員への深い思いがあったのですね。  

時代を先取り、しすぎたか!?

――具体的にはどういった機能を持たせたのですか。

吉成 まずは自己分析機能ですね。ユーザーはいくつかの質問に答えることで、自分がいまどういう状況なのかを把握できます。そのうえで目標を定め、その目標を達成するためにどうしたらいいのかという行動計画を作ります。さらに、財務シートを作成して一括管理ができるというものですね。

――かなり本格的なものだったのですね。

吉成 当時、日経ビジネスに広告を出したところ、ものすごい反響を呼びました。問い合わせもずいぶん受けましたけど、残念ながら売り上げにはつながりませんでしたね。

――どうしてですか?

吉成 『ライフデザイナー』はPC98用のソフトでした。パソコンの普及率が爆発的に上がりはじめた頃とはいえ、まだパソコンを持っていない家庭がほとんどという時代だったんです。関心があって問い合わせてくれた人は、殆どパソコンを持っていなかった。

――時代を先取りしすぎたのかもしれませんね。ところで、このソフトによって肝心の社員たちの意識や姿勢に変化はありましたか?

吉成 あんまり使ってもらえませんでした(笑)。だけど今でも、社員の教育や社内の業務改善のためのソフト開発には取り組んでいますし、社内で運用してうまくいったソフトは一般売りもしています。

――ソフト開発ならお手の物ですもんね。

吉成 とはいえ本業以外のソフトを作るというのは、簡単なようでなかなかできないことなんです。「そんなことに金をつぎこむのであれば本業のゲームを作ろう」となりますからね。

――『ライフデザイナー』のように商業的には成功しなかった製品がありながら、それでも「本業以外」のソフトにこだわるのはなぜでしょう?

吉成 いいゲームを生み出すためです。俗に「クソゲー」なんて言われるゲームがありますよね。クソゲーが生まれる最大の要因は、作り手がクソだからです。サクセスの社員にはクリエイターとしても社会人としても成熟してほしいので、会社としてサポートできることはしていきたいと思っていますし、こういったソフト開発もその一環です。  

サクセスの企業風土(1)
『ライフデザイナー』の開発は、サクセス社員たちの意識を改善するためだった。

 

吉成社長のつぶやき(22)

生活がめちゃくちゃな社員とは、一体どれくらいのレベルだったのかと聞いてみた。 『社員の自宅に行くことがあって、足の踏み場もないくらい物やゴミが散乱するゴミ屋敷だったってことがありましたね。しかも、そういう奴が一人だけじゃないんです(笑)』

サクセスの企業風土(2)

同僚の名前を覚えない社員がいる!?

――いいゲームを生み出すには、社員の教育からというお考えなのですね。これまでどんなソフトを開発されてきたのかも気になります。

吉成 現在運用しているのは、2013年に社内のコミュニケーションの円滑化を図るために作った『顔当てクイズ Who’s who?』というソフトです。これは、ランダムに選ばれた社員の顔写真がクイズとして出題され、その社員の名前を当てるというシンプルなゲームです。サクセスでは、毎朝10問ずつ業務開始前に行うことを義務付けているのですが、不正解の場合は、その社員の出身地や趣味などの名前以外の関連情報も閲覧できるんです。

――あまり親しくない同僚だと、そういったささやかな情報を知る機会もなかなかありませんから、かなり新鮮でしょうね。でも、出題されるのはすべて自社に所属している方の写真なんですよね? 会社の規模にもよりますが、名前を答えるだけならそう難しくないような気もしますが。

吉成 ところが、同じ会社で一緒に働いている人間にまったく興味がないっていう社員も多いんです。うちには260人くらいの社員がいるのですが、廊下ですれ違っても、お互い、相手が社内の人間なのか他社からのお客さんなのかもわからないっていうような状況でした。僕は時々うちの社員に「彼の名前なんだっけ?」と、適当な人をさしてさりげなく尋ねてみるんですが、信じられないことに、何年も近くの席で仕事をしている同僚の名前すら答えられない者がいるんですよ。

――それは衝撃的ですね。

吉成 そんな状況に危機感を覚えて考えついたのが『Who’s who?』なんです。せめて同僚の名前くらいは覚えてほしくて。

――吉成社長はさきほど、サクセスには変わり者の社員が多いとおっしゃってましたが、どんな業種の会社であっても業務内容によっては他の部署の人間とはまったく接点がないという社員がいてもおかしくありませんし、こうしてゲーム感覚で社員の顔と名前を覚えられるというのはいいアイディアかもしれませんね。  

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『顔当てクイズ Who’s who』 サクセスの社員には、毎朝10問のノルマが課されている。

 

人事評価のパラメーター

――『Who’s who?』の導入によって、効果は表れましたか?

吉成 明らかに効果が出ています。導入したばかりの頃は正答率が3割くらいだったのですが、2年ほどで8割にまで上昇しました。

――劇的な変化ですね。

吉成 なんせ、うちでは『Who’s who?』の成績が悪いとお給料が上がらないシステムになってますから(笑)

――ええっ、本当ですか!?

吉成 もちろんです。会社によって人事評価の方法は色々ありますが、社員を評価するうえでこれほどわかりやすいパラメーターはありませんよ。実際、人の名前を覚えない社員は仕事ができない者が多いですから。

――そんなにはっきりと関係しているものなのでしょうか。

吉成 だって、ゲームの開発はチームを組んで行うことが多いのに、同僚の名前すら覚えないでまともにコミュニケーションが取れるわけがないでしょう。結果的に仕事上のトラブルも多くなりますし、そのせいで大きな損失につながることもあるのですから。

――さっきはクイズの成績が給料の額に直結するのはシビアだと感じましたが、そういったことも考え合わせると納得です。260人分の名前を覚えるくらいなら、心懸け次第でどうにかできそうですしね。

吉成 仕事のトラブルのほとんどはコミュニケーションの不足によるものです。そしてコミュニケーション・トラブルを防ぐためには何が有効かを考えたとき、いちばん手っ取り早いのは、相手を好きになり、仲良くなることだと思います。そのためにはまず名前を覚えることが最低条件で、そこからコミュニケーションを深めてゆくには、相手に付随する情報を知ることがとても重要なんです。だから『Who’s who?』には出身地や以前在籍していた会社といった、一見無駄に見えるような情報もいろいろと載せているんですよ。

――『Who’s who?』の導入は、同じ職場で働く人の顔と名前を「情報として記憶させる」というだけにとどまらず、社内のコミュニケーションを円滑にして仕事のトラブルを未然に防ぎ、ひいては業績アップにつなげるという効果を狙ってのものなのですね。

吉成 そうですね。社員のコミュニケーション能力不足という問題は、ゲーム会社であれば多かれ少なかれ抱えているものですが、うちの社員は『Who’s who?』のおかげでずいぶん改善できたと思いますよ。  

吉成社長のつぶやき(23)

かつて、コミュニケーション・トラブルから小さなトラブルが連発していたころ、ある社員からの提案に吉成社長は呆れかえったという。 『「これからは直に話すのをやめて、すべてメールでやりとりしましょう」っていう提案だったんです。直ぐにそいつを呼び出して「バカか、お前は!」って、どやしつけましたよ。なんでそういう発想になるんだろ。そりゃ、言った言わないの問題は無くなるかもしれないが、相手の表情とか声のトーンとか、文字に置き換えられない情報の重要性が理解できていない』

サクセスの企業風土(3)

グループウェアの活用

――通信アプリ『BIZLINE』も業務改善のために開発されたということでしたが。

吉成 『BIZLINE』は、個人のスマホやタブレットといった端末を業務に利用することで、通信費のコストダウンと、作業効率の向上を実現しました。BYOD(Bring Your Own Device)の一つです。 昔から、社内ではビジネスホンを部署ごとに数台ずつ配置しているのですが、社員の中には電話の取り次ぎを面倒くさがって、まったく電話に出ない端末もけっこうあったんですよ。

――全員が「他の誰かが出るだろう」と考えるんですね(笑)。

吉成 それで社内でけっこうクレームが出るんですよ。リスポンスが良いかどうかは、人に与える印象に大きく影響するんです。でも、そのことに気づいていない社員は意外と多いんです。 『BIZLINE』では、社内全員のパソコンとスマートフォンのログイン状況を常に把握できますし、相手を呼び出す場合も内線番号なしできます。出ない場合は、メッセージをテキストでも送れますので、ずいぶんと効率が上がりました。

――注意してもなかなか改善しなかった社員の問題点を、新しいソフトウェアの開発に活かしたわけですね。

吉成 まあ、最近では『BIZLINE』からログアウトしたり、マナーモードにするなど、あの手この手で電話に出ない社員も出てきたので、バージョンアップの際にその対応策を組み込んでいます。業務改善のヒントはいたるところにあって、まだまだ工夫の余地はありますね。

――困った社員に手を焼きつつも、しっかり役立てているのですね(笑)。そういえば最近、サクセスの受付も内線電話から『BIZLINE』に変わりましたよね。訪問相手の名前からも部署名からも検索できますし、相手の情報が写真付きで表示されるのでとても使いやすかったです。

吉成 じつは『BIZLINE』に『Who’s who?』のデータを連動させているんです。また、社内ツールとしてメールやグループウェアを利用しているのですが、『BIZLINE』にそうした他社のソフトと連動できるようにすることで利便性を高める計画です。  

社長自らが陣頭指揮!

――これまでのお話を伺っていると、吉成社長の、業務改善に対する並々ならぬ意欲を感じます。こうした改善策には、社員からの発案も多いのでしょうか。

吉成 社員からの要望や提案には積極的に耳を傾けています。とはいえ、会議や打ち合わせといった場では時間の制約もあって直接聞くことが難しいので、そのためのソフトを開発しました。グループウェア上から業務改善の提案書に「問題点」と「解決策」を書いて提出すれば、遅くとも翌月には当該部署から何らかの回答をすることになっています。これらすべての情報は全社員に公開され、共有されています。

――提案のハードルが下がることで、いろんなアイディアが集まりそうですね。

吉成 このシステムは2014年にスタートしましたが、ソフトを開発する以前の半年ほどはメールを使って試していたんです。そのときはものすごい数のメールが届きましたね。それらすべての提案に目を通し、エクセルにまとめて、回答を提示しました。  

改善提案一覧
業務改善案を募ったところ、社員たちから膨大な提案が寄せられた。 当初はエクセルでまとめていた。

  ――もしかして、すべて社長が処理されたのですか?

吉成 まあ、社員のクレームを聞くのが社長の仕事ですからね(笑)。 当時は次々と届く要望や提案を片っ端から処理しなければならず大変でしたけど、そのときに大きな問題はあらかた出尽くしたので、今はだいぶ落ち着きました。

――これまでの業務改善案の中に、なにか画期的なものはありましたか?

吉成 取るに足らないものが多かったですね。たとえば、「観葉植物の鉢植えにエアコンの風が直撃して枯れそうだから、置き場所を変更してはどうか」とか「席を立つときに椅子を引いてくれない人がいて通行の邪魔になるのだが、直接は言いづらいのでルール化してほしい」といった具合です。そんな案が山ほど届きました。

――ちなみに、そういう場合はどう回答されるのですか?

吉成 「人や会社に頼らず、自分で考えて対処しなさい」と(笑)。ただ、そういった些細な問題点でも、目の付け所が優れていたり、創意工夫を凝らしたスマートな解決法を示した提案もあって感心することもありますね。「good idea!」とコメントして即対応しています。ほかにも社内で使用しているシステムの不具合から福利厚生の不満点など、大小に関わらずさまざまな意見が寄せられました。  

吉成社長のつぶやき(24)

個人情報の保護が叫ばれる昨今、『Who’s who?』への顔出しを嫌がる社員はいなかったのだろうか。 『全員強制です。仕事相手に顔と名前を覚えてもらうってすごく大事なことでしょう。その意味が分からないような人間は、会社に勤める資格がない。 最近のテレビで、一般人の顔をぼかすものだから画面の大半がぼけていることってよくありますよね。そんなことに気を配るのは世界中で日本だけの現象ですよ。これも馬鹿げた日本固有の現象。玄関に表札を出さない家が増えていますよね。これも同じ現象。病的としか言えないな』

サクセスの企業風土(4)

良い企画は、会議の場では出てこない

――グループウェアを使って、ほかに成果が上がっているものはありますか?

吉成 独自に作った『企画募集』用のソフトを使って、いつでも企画を提案できるようにしたところ、提出される企画書の数がずいぶん増えました。サイボウズ上に上がった企画書は全社員が閲覧して「イイネ」ボタンを押せるようになっていますので、企画提案者はすぐに反応を見ることができます。

――企画会議の場でプレゼンする前にある程度の反応を知ることができるとなれば、企画のブラッシュアップにも役立ちますね。

吉成 どの業種でもそうかもしれませんが、良い企画っていうのは普通の会議の場ではなかなか出ないものなんです。だからこうした専用ソフトを活用するのもひとつの手だし、サクセスではほかにも、月1回会議室でビールを飲みながらブレスト会議みたいなことをやってます。これは以前からずっと続けていることで、『企画募集』用ソフトでの企画提案とは関係なく、色々な企画を自由に発言してもらってます。

――お酒を飲みながらとは、なんと素晴らしい会議(笑)!

吉成 ほどよくリラックスすれば、良い意見が交わされますよ。細かいルールは決めていないので、資料を持ち込んでプレゼンする社員もいれば、飲み食いを楽しんでいるだけの社員もいるといった気軽な感じです。メンバーは固定ではありませんが、毎回10人くらい参加してますね。 ほかにもグループごとに持ち回りで、毎月1回の「社長との飲み会」を開催しています。

――最新のシステムを導入して効率化を図るだけでなく、気軽に触れ合えるコミュニケーションの場を設けて、そこから生まれる発想も大切にしているのですね。

吉成 『企画募集』用ソフトの利用で企画や提案が出しやすくなっても、出さない社員はぜんぜん出しませんからね。どうやったら社員一人ひとりが能力を発揮しやすい組織を作れるか、あの手この手で試しています。  

社員のためにできること

――お話を伺っていると、業務改善の件にしても企画提案の件にしても、とにかくスピード感を感じます。

吉成 うちのモットーは「割り込み処理」。急な案件が発生しても「この仕事が終わったら」とか「ひと段落したら」なんて言って後回しにしていたら忘れちゃいますからね。 だから、うちの社員は何かあるたびに気軽に社長室を訪れるんですよ。僕が何か打ち合わせをしていても、たとえばハンコを押すくらいなら直ぐ処理できますから、わざわざ打合せが終わるのを待つ必要なんかありません。「巧遅を求めるな、拙速を求めよ」がサクセスのモットーです。

――吉成社長が社員に求めることが「行動指針」に記されていますが、自らも実践されているんですね。

吉成 現在の「行動指針」は7つの項目から成っていますが、最初はもっと多かったんですよ。1つ前のバージョンは12項目あったんです。でもあんまり多くてなかなか守ってもらえないから、どんどん削っていったんです(笑)。 割り込み処理は「巧遅を求めるな、拙速を求めよ」という指針に、業務改善は「問題点の指摘は不要。問題解決法を提案せよ」、『Who’s who?』は「人の名前を覚えよ」につながっています。

――これだけしっかり社内のシステムに組み込めば、「行動指針」は単なる標語として終わることなく、きちんと機能しますね。

吉成 「行動指針」はサクセスの社員に「こうあってほしい」という理想ですが、そのために会社としてサポートすべきことはいろいろあります。たくさん本を読んで知識を広げてほしいから補助金を出したり、プライベートも充実させてほしいから勤務時間や休暇の制度を整えたり、クラブ活動を奨励したりしています。

――社員のやる気を出すために、福利厚生に力を入れているのですね。

吉成 それだけではなく、社員には心身ともに健康でいてほしいからです。 じつは昔から、ゲーム業界に従事する人たちはうつ病にかかる割合が高いんですよ。ゲーム会社のなかには、午後から業務をスタートして夜通し働くようなスタイルのところもまだまだ多いんです。でも、そんな働き方を続けていては、そのうち心身のバランスを崩してしまうのは当たり前ですよね。  

行動指針
ゲーム業界で成功するための必要条件。

 

吉成社長のつぶやき(25)

ビールの出るブレスト会議。ということは、吉成社長はビール党? 『運動前に準備体操をして血液の循環を良くするのと同じで、お酒も血液の循環を良くしてブレストの効果を高める効果があるんです。そうすると、1ドリンク1アイデアです』

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