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業界の問題、あれやこれや(5)

スマホゲームの隆盛と問題

――日本国内ではスマホゲームは元気ですが、PS4をはじめとするコンシューマーゲームは勢いがありませんよね。コンシューマー事業から撤退するゲーム会社もあって寂しい限りです。

吉成 かつてアーケードからコンシューマーへとゲームの主流が移行した時代、ゲーム市場はコンシューマーソフトだけで年間5000億円は超えていました。今やコンシューマーはものすごく縮小しましたが、じつは、スマホゲームやオンラインゲームなどの隆盛でゲームのマーケット自体はどんどん大きくなり、ゲーム市場全体ではすでに1兆円を超えてるんですよ。

――短期間でとんでもない成長を遂げたゲーム会社が何社もありますもんね。

吉成 一方で、消えてゆくゲーム会社もたくさんあるわけですが、それはこれまでも話したとおり、ゲーム業界のメインストリームを捉え損ねたり、新しい技術のキャッチアップができていない会社が多いんです。新しい技術といっても、すでにある程度の技術や知識を持っている技術者であれば習得に時間がかかるものでもないのですから、そういった理由で廃業に追い込まれるのは残念ですよね。ゲームに関わる人間は、継続して勉強していくことが宿命です。

――スマホゲームは手軽に始められることもあり、爆発的なヒット作もたくさん生まれていますが、その一方で課金がらみの問題も大きく取り沙汰されるようになりました。

吉成 1つのタイトルで年間何百億も稼ぐゲームがごろごろあるわけですから、社会的な影響も大きいですよね。スマホゲームは基本的には無料でプレイできるものがほとんどですが、ガチャやくじといった課金要素に際限なくお金を注ぎ込むユーザーもいます。そして、こうしたユーザーがゲーム収益の大部分を担っているわけです。

――レアアイテムを入手できるかもしれないと思うと、「10連ガチャなら多少は元が取れるし」「あと1回」「もう1回だけ」と、ついついガチャを回してしまう気持ちもわかります。

吉成 ガチャ自体、射幸心を煽るシステムになっていますからね。いまは入手確率の表示が義務付けられていますが、規制が入るまではそれもなかったので、いっそうその傾向は強かったと思います。自分で稼いだお金であればまだしも、保護者のお金で決済することを理解していない中高生くらいの子供が無制限にお金をつぎ込んでしまったのも当然だったのではないでしょうか。  

究極の理想は・・・

――ユーザーを保護するために業界全体で規制を作っても、規制をかいくぐるようにして課金にまつわる新たな問題が次々と起こっています。無料のゲームを運営するためには、どうしてもガチャやくじなどに頼らざるを得ないのでしょうか。

吉成 ほとんどすべてのゲームでガチャを導入していますが、過度の課金システムを設けなくても大きな収益を上げているゲームもありますし、ガチャのない良質なゲームもありますよ。うちもガチャのないゲームをけっこう出していますし、この手の問題は起こっていません。

――課金なしで、どのように収益を上げているのでしょう?

吉成 一つは広告ですね。僕は、ゲームビジネスの究極の理想というのは、広告のみで収益をあげることだと思っています。テレビで言うとNHK方式ではなく民放方式ですね。

――課題も多そうですが、いい方向に進むように期待したいです。

吉成 何十万円も課金するほど夢中になれるというのはそれだけおもしろい作品なのだろうし、そんなゲームがあるというのは、ユーザーにとってはある意味幸せなことかもしれません。でも、ユーザーは数多あるゲームの中から好きなものを選択できるわけですから、有料・無料にかかわらずいろんなゲームに目を向けてみてほしいですね。  

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docomoで展開している[スゴ得]

 

吉成社長のつぶやき(31)

スマホの問題といえば、「ポケモンGO」は世界中でいろんな問題が起きたことも記憶に新しい。日本でも総務省や消費者庁から、歩きスマホやながら運転をしないよう異例の注意喚起がなされたが、吉成社長は特に興味がない様子だった。 『大ヒットして瞬間的に熱狂はするだろうけど、たぶん一時のブームで終わるんじゃないかな。とくに日本人はすぐに飽きそうだしね』

プロってどんな人?(1)

業種を問わず多くの企業人と接し、社内でも人材の育成に力を注いできた吉成社長だが、時には、彼らのプロとしての姿勢に物足りなさを感じることもあるという。ゲーム業界のみならず社会人として求められる資質、そして取り組むべき課題について語ってもらった。  

ゲームスクールで何を学ぶ?

――サクセスの創業から40年、これまでいろんなタイプの社員がいらっしゃったと思いますが、昔と今で変化を感じることはありますか。

吉成 少子化という流れの中で、日本人全体の知的レベルが下がっているように感じます。ゲーム業界に限っていうと、コンピューターゲームの黎明期には非常に高い専門知識がなければクリエイターにはなれませんでしたから、当時と今を比べると、ゲームクリエイターの基礎的な学力の差は歴然です。

――つまり、クリエイターの質が下がってきていると?

吉成 いいえ、一概にはそうは言えません。昔と違って今は優れたツールがたくさん開発されていますから、ゲームクリエイターを目指す上では学力の差などほとんど問題になりませんから。さらに日本にはゲームの専門学校も多く、卒業後すぐに戦力になる優秀な人材が毎年コンスタントに輩出されています。ゲームの専門学校がこんなに多いのは世界広しといえども日本くらいですよ。

――授業料を払って専門学校に入るくらいゲーム作りに対する意欲が高いのですから、会社でもバリバリ働いて貢献してくれそうですね。

吉成 ところがそう簡単にもいかなくて、与えられた仕事は黙々とこなすけれども仕事を仕切ったり人を引っ張っていくのは苦手という人が増えているんですよ。ゲーム業界ではもともとこういったタイプの人間が多く、部長や課長を任せられる人材が少ないことが悩みの種なんです。うちにも「仕事が増えて大変だから管理職にはなりたくない」という社員がいるので、ちょっと危機感を覚えますね。  

「やりたくない」からやめちゃうの?

――技術者としての能力とゲーム会社の社員としての適性はまた別ということですか。逆に考えると、ゲーム業界で働くことを考えている人は、専門スキルを磨くだけでなく同じ組織のメンバーに意識を向けることを心がけると、就職の大きなアドバンテージに繋がるかもしれませんね。

吉成 統率力は一朝一夕に身につくものではありませんが、もうすこし積極性を持つ人が増えるといいなと思います。 以前、あるゲーム専門学校の先生から聞いた話なのですが、その学校のテニスクラブで部長を決める際に、なかなか引き受け手がいなかったそうなんです。らちがあかないので、担当の教師が見込みのある生徒を指名したところ、その生徒は素直に首を縦に振らず、最終的には「クラブを辞めさせていただきます」となったとか。

――そこまで嫌がるというのはすごいですね。

吉成 冗談みたいな話ですよね(笑)。人を統率するという経験で得られるメリットよりも、生ずる責任や煩わしさといったデメリットのほうが大きいと判断したのでしょう。たとえ苦手であっても必要とあらばリーダーシップをとれる人を企業は求めているのですが・・・。

――せっかく経験を積めるチャンスなのに、もったいない気がします。

吉成 日本の社会全体にそういう消極的なタイプが増えてるのかもしれません。たとえば大手総合商社であっても、海外赴任を嫌がる社員が多いそうです。僕ら団塊の世代は、海外で仕事することに憧れた世代なので、そういった風潮に驚きを覚えますが、今の若い人たちには海外に対する憧れは無くなっていますね。

――採用する側からすると、頭の痛い問題ですね。サクセスの入社試験では社長が面接を行って最終判断をされているそうですが、特に重視するポイントはありますか?

吉成 うーん。採用を決めるのはほとんど直感かな。

――直感ですか? けっこうアバウトですね!?

吉成 僕は日本のゲーム業界の中でいちばん多く面接をしてきた男ですから(笑)。志望者には新卒でも中途採用でも独自の技能テストを行っているので、一定の条件をクリアした人材が入ってきます。その上で僕が判断を下すのは、テストの数値や履歴書以外の部分になります。短い面接時間で「使える人材か、否か」という点を見極めるには、経験からの直感がものを言いますね。  

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過去サクセスに応募し面接した人数は数千人。

 

吉成社長のつぶやき(32)

就職活動がうまくいかない人に、何かアドバイスは? 『ある元社員から「書類選考で落とされて、なかなか面接にこぎつけない」という相談を受けて履歴書を見せてもらったことがあるんだけど、受からない理由は簡単、本人のアピールポイントが的外れで無駄な内容が多かった。ひょいひょいっと添削して渡してやったら、すぐに就職が決まったよ。まずやるべきことは企業がどんな人材を欲しているかを把握すること。それがわかれば、自分が何をアピールすればいいかは自ずとわかるでしょう』

プロってどんな人?(2)

「がんばります!」は必要ない

――新卒採用と中途採用の社員の割合はどれくらいですか?

吉成 うちでは新卒が3分の1、中途が3分の2といったところです。中途採用の社員は、前職もゲーム会社であることがほとんどです。日本では毎年ゲーム会社の1割が廃業していますから、技術を持った人はゲーム業界内をぐるぐる巡っていることになりますね。

――すでにゲーム業界で経験を積んでいる中途採用と比べ、新卒の社員を一から育てるには時間や手間がかかりそうですね。

吉成 社会経験ゼロの新卒社員にいきなり大きな仕事を任せることはできませんが、うちには多くのラインがありますから、ゲーム専門学校で学んできた新卒社員はすぐにプロジェクトに参加させ、経験を積ませることができます。ですから新人の育成が特に大きな負担になるということはありませんね。強いて言えば「こんな作品を作りたい」とか「こういうプロジェクトに携わりたい」という目標を明確に持っている新卒社員はほとんどいないので、そこは中途採用に劣る部分だと言えます。

――「ゲームを作りたい」という意欲はあれど、具体的にはまだうまくイメージできていないと?

吉成 はい。でも、それはそれでいいんですよ。たとえば大学に入る時に「どの学部でどんなことが学ぶことができ、将来どんなふうに役に立つのか」を理解したうえで専攻を選ぶ高校生なんてほとんどいないじゃないですか。下手をすれば大学の先生すらそんなことわかってません。偏差値で選んだ無難な大学に入るというパターンが多いはずです。大学入試の時点で明確な人生プランを立てている高校生がいないのと同じように、会社だって新卒で入社した時点でそこまで求めたりはしません。ただ「良いゲームを作りたい」という意識だけはしっかり持っていてほしいですね。

――常にその意識を持っていれば、自ずと成長して具体的な目標も生まれますね。

吉成 ゲーム会社の使命は良いゲームを生み出すことで、そのためには社員一人一人が良い作り手に成長する必要があります。いわゆる「クソゲー」が生まれる原因は、作り手がクソだからにほかなりません。だから「できるだけ早く一人前のクリエイターになりたい」という意欲を持つ社員をゲーム会社は求めています。いつまでたっても企画書の1本も出さずに言われたことだけを無難にこなしているような社員は必要ありません。

――ゲームの作り手の中には「どんな仕事を指示されても全力で頑張る」というタイプもいるのではないですか?

吉成 「頑張る」ということを日本人の美徳のように考える人も多いと思うのですが、僕は、頑張ること自体に価値を感じません。社員たちにはいつも話しているのですが、無能な人間にやみくもに頑張ってもらうことほど会社にとって迷惑なものはないんですよ。職種に限らず、社員として大事なことは「どれだけ頑張るか」ではなく、事に当たって必要な情報を集め、段取りを考えて仕事に取りかかることです。  

大口を叩くくらいのほうがいい

――ゲーム会社に入ったからには、自分の企画したゲームを手掛けたいという望みを誰もが持っていると思います。ことゲーム企画の提案に関しては、熾烈なアピール合戦になりそうですが。

吉成 社員たちが「こんなゲームを作りたい」「これは自分に任せろ」と言ってくれることが、社長にとってはいちばん楽ですね。もちろん商品開発には時間もお金も必要ですからある程度の勝算がないとGOサインを出せませんが、提案者のやる気に押されて承認してしまうこともあります。

――熱意や勢いって重要なんですね。

吉成 ゲームっていうのは複数の人間がチームを組んで作るでしょう? だから時には空中分解しそうになることもあるのですが、誰かひとりでも狂ったような人がいればなんとかなるものなんですよ(笑)。「四の五の言わずに俺に任せろ!」というくらいがいいんです。人の顔色を見ながら調整を重ねるような人間ばかりが集まっても、ろくなゲームはできませんからね。

――一歩間違うと、とんでもない作品ができてしまいそう……(笑)

吉成 これほど変化のスピードが速い時代に「これを作っておけば手堅い」なんてゲームは存在しません。ヒットを確信して出したゲームだって半分以上は外れるのですから。ゲームビジネスというのはある意味ギャンブルなんです。どのみち博打なら、気概のある人に任せるほうが博打しがいがあるでしょう? そういったタイプの社員がもっと増えてほしいですね。  

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1つの棚に約250タイトルが収納されている。この中でヒットした作品は1割。

 

吉成社長のつぶやき(33)

サクセスが開発するタイトル数は、年間約30本。企画を通すのは並大抵のことではなさそうだ。 『僕が出す企画も多いから、社員の企画で採用されるケースは実際にはもっと少数。社員は270人いるけど、企画を出すペースなら1対270でも負けないよ(笑)』

プロってどんな人?(3)

性格は二の次!?

――サクセスの社員には外国人の方も多いと伺っていますが、積極的に外国人を採用する理由とは?

吉成 現在サクセスに在籍している外国人社員は、韓国・中国・台湾・ニュージーランド・イギリスと国籍はバラバラですが、彼らは一様にガッツがすごいんですよ。そういうやる気のある人材を入れると他ののんびりした社員たちも刺激を受けて、社内全体が活気づきます。

――正確な意思疎通ができないなどの問題は起こりませんか?

吉成 もちろん言葉や文化の違いから仕事がスムーズに進まないことはちょくちょくあります。でも、そこをカバーすべくお互いにコミュニケーションを取ろうと奮闘するでしょう? そういった苦労や努力をすること自体が社内にいい影響を及ぼしているのを僕は実感しています。外国人を敢えて採用している大きな狙いはそこにありますね。

――日本でゲームを作ろうとわざわざ海を渡ってきたくらいですから、ハングリー精神もすごそうですね。多少のハードルがあっても精力的に克服してゆきそうです。

吉成 ハングリー精神だけに限ったことではないのですが、どこかとんがったところがある人間のほうがおもしろいじゃないですか。うちには他にも色々なマイノリティー社員もいますが、そういう個性的な社員は往々にして優秀ですね。おもしろい発想を持ってるし、優れた提案もいろいろ出してくれます。

――個性的な社員がたくさんいらっしゃるのですね。

吉成 ええ、変わり者が多いです(笑)。クリエイティブな仕事って個性が必要ですからね。 うちは採用のときに学歴・年齢・性別・国籍・性格をいっさい問わないのでいろんな社員が入ってくるのですが、なかには協調性がなかったり、個性的過ぎて扱いづらいというタイプもいます。困り果てた社員が「もっと性格の良いやつを採用してくださいよ」なんて不満をもらす社員もいるんですが、「だったらお前も採ってないよ」って返してます(笑)。  

差がつくのはあっという間

――サクセスでは技術職の採用に独自の技能テストを実施しているとのことですが、ゲーム業界ではテストを行わない会社も多いそうですね。

吉成 中途採用の場合はゲーム業界の経験者がほとんどですから、ある程度の実力が担保されていると考える会社が多いのでしょうね。しかし技術の進歩は日進月歩です。常に新しい知識を取り入れている人といつまでも古い知識に頼っている人を「経験者」ということで一括りにすることはできません。

――これまでのお話でも継続して勉強していくことの大切さを繰り返し強調されていますし、社員にも勉強熱心な方が多そうです。

吉成 社員にも口を酸っぱくして言ってますからね(笑)。 たとえば歯医者さんにかかったとき、当たり外れを感じたことってけっこうありませんか? 医師免許などの国家資格は、一度取得してしまえばよほどのヘマをしない限りは一生続けていけますから、何十年も勉強しない人も多いんです。だけど歯の治療法というのは次々と新しい技術が出てくるでしょう? それを習得するためのセミナーがまた高額なのですが、高い授業料を払ってセミナーを受け続けて自分の知識と技術をアップデートしていくのが本当のプロの姿勢なんです。でも、どんな業界でも真に「プロ」と呼べるような人間というのは、じつは限られているんですよ。

――たしかに上手な歯医者さんと下手な歯医者さんって、ものすごく差がありますね。ベテランの先生には経験があり、若い先生には最新の知識や技術があるとなると、どちらを選ぶべきか迷うところです。両方を兼ね備えていればベストですよね。

吉成 ゲームクリエイターも同じです。経験の長さは関係なく、勉強しているエンジニアとそうでないエンジニアでは仕事のスピードも質もぜんぜん違いますよ。プログラマーの場合は特にその傾向が顕著で、うちでいちばんできる人間といちばんできない人間では10倍くらいの差がありますね。

――10倍といったら、相当な差ですよね!?

吉成 実際、できるプログラマーなら1日で終わらせてしまう仕事も、できないプログラマーに任せると10日経っても完成しません。勉強していないプログラマーは稚拙で効率の悪い方法で進めるので、それくらいの差が生まれてしまうんですよ。うちの社内ではそれくらいの差だけれど、ゲーム業界全体で考えるともっと大きな差があるはずです。  

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プログラマー試験。受験者はC、PHP、JAVA他一番得意な言語を選択。

 

吉成社長のつぶやき(34)

サクセスでは外国人の社員による英語講座も行っており、吉成社長も熱心に受講しているらしい。社内での評判はどうかと尋ねてみたところ・・・。 『それが受講者の数がぜんぜん増えないんですよ。講師に「受講者を集めるために何かしてるの?」って聞いたら、「社内メールで告知してます」って言うんですよ。受講者を集めるまでが講師の仕事なんだから、社内メールで効果がないことが分かったら、さっさと別の手を打てばいいのに。僕が「自分の仕事を自分で作れ」っていうのはそういうこと。なにも大きなプロジェクトを立ち上げろっていうことじゃなくてね』

プロってどんな人?(4)

勉強は必須条件

――サクセスでは積極的に外部セミナーに参加する社員が多いそうですね。

吉成 社会人たるものスキルアップのための自己投資を惜しむべきではありませんが、会社からも必要に応じて費用を補助しています。ただ「勉強しろ」と言うだけではなく実際にサポートすることで、社員たちも積極的に取り組んでくれていますね。

――それとは別に、社内でも勉強会が開かれているのだとか。

吉成 各部門やチームごとに自主的な勉強会を実施していますし、社内セミナーも開いています。うちは平均勤続年数が8年とゲーム会社にしては長く、ベテラン社員が多いので、そのメリットを生かしてベテラン社員にオリジナル講座を作らせているんですよ。

――専門技能を教えるための講座を自前で作るのというのは、なかなか大変なことだと思います。しかもベテランの時間を通常業務以外につぎ込むわけですよね?

吉成 これもまた重要な仕事です。それに、人に教えるのって、じつは一番自分の勉強になるんですよ。いざ他人に教えるとなれば、自分の中でちゃんと整理がついてないことを発見したり、再整理する必要がありますからね。そういう意味では、社内セミナーは受講する人間よりもむしろ教える側のスキルアップにつながっていますね。

――講師は何人くらいいらっしゃるのでしょう。

吉成 5、6人いて、それぞれが各ジャンルのエキスパートです。

――社内セミナーを受講するのは新人の方が多いのですか?

吉成 年齢も部署の壁もありませんから、それこそベテラン連中も受講していますよ。一口に技術者と言っても、一人ひとりがすべての工程をカバーしてるわけではありません。どんな人にも知識が抜けている分野はありますから、その欠けたところを埋めるためにもこうした社内セミナーを活用していますね。

――準備にもそれなりの時間を要するわけですから、教える側も教わる側も気が抜けませんね。

吉成 こういった手間を煩わしいと嫌がる人もいるかもしれませんが、少なくともサクセスでは、そういう発想をする社員は「できない人材」と判断します。たとえ優秀であっても、面倒だからという理由で自分を成長させる機会を棒にふるような社員には、いつ辞めてもらってもかまいません。  

そんな意識で大丈夫!?

――技術職以外の方もやはり社内で勉強会などをなさっているのでしょうか。

吉成 プランナー向けの社内セミナーはありますが、総務やマーケティングなど職種によって勉強する内容がまったく異なりますから、個人で自主的に勉強するケースもあります。社外のセミナーを受講したりハッカソンに参加する者もいますし、感性を磨くために観劇や美術鑑賞に励む者もいますね。

――それぞれが高いプロ意識を持って働いているのですね。

吉成 いやいや、中にはまったく勉強しない者も、自分の勉強不足に無自覚な者もいますよ(笑)。 つい先だっても、うちの社員と話がかみ合わなくて、「○○関係の本を読んだことはある?」と聞いたら、「もちろん!」と胸を張って、「2冊は読みました」と答えるんです。あれには参りました。

――常日頃から本を読むようにと社員教育をしている立場からすると、残念な出来事でしたね……。

吉成 会社にはさまざまな人間が集まります。企画力に優れた人もいれば事務能力の高い人もいるし、リーダーシップを発揮するタイプも、逆に縁の下で支えるのが向いているタイプもいます。会社としては、それぞれが能力を発揮できるよう適材適所を心がけていますが、たとえどんな役割を与えられたにしても、プロとしてのプライドを持ってその仕事に取り組んでもらいたいのです。 世の中には「ビジネス書の類には頼らない」というポリシーを持っている人も少なくありませんし、勉強の手段は一つではないとはいえ、本を読んで勉強することは基本中の基本。これからもうちの社員には徹底していきたいですね。  

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社内で実施しているセミナーの一部は、HP上でも一般にも公開している。

 

吉成社長のつぶやき(35)

若者の読書離れ、新聞離れを嘆く吉成社長。 『人類が他の動物と違って大きく進歩した要因は、文字の発明によって知識を伝える方法を持ったこと、印刷技術の発明によって情報の蓄積ができるようになり、人類の知的レベルを高めたこと。だから、本を読まない人間は動物と同じ。動物にゲームは作れない』

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