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サクセスの「これから」

社長室の大きなホワイトボードには、今年の新入社員のプレートが新たに加わっていた。社員2人からスタートしたサクセスを40年間にわたって育てあげてきた吉成社長が、この会社で実現しようとしてきたことは何なのか。そして、次なる節目である50周年に向け、どんなビジョンを胸に描いているのだろう。  

売り上げ目標なんてどうでもいい

――この40年間、経営者として吉成社長が目指してきたことをお聞かせください。

吉成 ゲーム会社を経営する目的はただ一つ、良いゲームを作ることです。そしてゲーム会社の経営者である僕がすべきことは、社員たちが良いゲームを生み出しやすい環境を整えること。サクセスをクリエイターにとってのユートピアにすることが、これまでも、これからも僕が目指す目標であり使命なんです。それに比べれば、売り上げ目標だとか従業員数なんてのは、はっきり言ってどうでもいいことですね。

――サクセスを立ち上げるまで、吉成社長はゲーム会社に在籍したことはなかったと伺っています。それまで勤めていた会社や営業で訪れた会社の中に、サクセスののモデルとなる「ユートピアのような会社」があったのでしょうか?

吉成 率直に言って、お手本にしたいような会社はありませんでした。僕は幾つかの会社で営業職として働きましたが、今で言うところのブラック企業がかわいく見えてくるほどの、桁違いの暗黒企業ばかりでしたから(笑)。

――目指すべきモデルがない中で、ご自身は「社員のためのユートピアを作ろう」と思われたのですね。

吉成 まあ、ユートピアというとちょっと言い過ぎかもしれませんが、「ゲーム業界の中ではいちばんホワイトな会社」とは自称してます(笑)。なにも「社員に何不自由のない、居心地の良い環境を与えよう」などと大層なことを考えていたわけではなく、いろんな会社を見るなかで頭に思い浮かんだ「ここをこうしたらもっと良くなるのに」というアイディアを、一つ一つサクセスに詰め込んでいっただけなんです。それが結果的に「自称・ゲーム業界の中ではいちばんホワイトな会社」となったわけです。

――ゲーム業界内での付き合いが増えたあとも、それは変わらなかったのでしょうか?

吉成 どんなに羽振りの良い会社でも、ゲーム業界内で「あんな会社にしたい」「羨ましい」と思えるような会社はありませんでした。もちろん、役に立ちそうなところは取り入れましたが、ゲーム会社には基本的にブラック企業が多いので、お手本にしたいとはとても思えなかったんです(笑)。

――では、本当に手探りでここまで会社を大きく育ててこられたのですね。

吉成 ほとんど「運」と「なりゆき」でここまで続けてこられました(笑)。だけど、運だろうがなりゆきだろうが、ゲーム作りという楽しい仕事を40年も続けてこられたのですから、本当に幸せなことです。これからもずっと作り続けていきたいと思っています。

――40年も続いているゲーム会社は、極めて稀ですよね。

吉成 過去にとてつもない大ヒットゲームを出したことがあっても、経営が傾いて廃業した会社はゴロゴロありますからね。この業界に身を置いていて寂しい点の一つは、同業の友人が少ないことです。毎年1割の会社が潰れていく業界ですから、関係のあった人達がどんどんいなくなってしまうんですよ。年上や同年代の経営者で、今もゲーム会社を続けている人はほとんどいません。  

大ヒットを狙え!

――ヒット作の1本や2本で、何十年も経営を維持できるはずはありませんからね。

吉成 一時的な成功ではどうにもなりません。だけど、やむなく廃業した人たちだって、できることならゲーム作りを続けたいんです。かつての有名なクリエイターで、今も細々とゲームを作り続けている人たちはたくさんいます。

――技術と感性さえ磨いておけば、もう一度ヒットを出すことも不可能ではないように思います。

吉成 そう簡単な話でもありません。1本のゲームを作り上げるには、何人ものクリエイターがチームを組んで半年、1年とかかるものなので、それなりの資金が必要です。しかも今ヒットしているゲームというのは、何十人というマンパワーをつぎ込み、大掛かりに作られたものばかり。そんな土俵の上で、一度脱落してしまったクリエイターが再び浮かび上がるのは容易いことではありませんからね。

――難しいですね。吉成社長が先ほどおっしゃっていた「運」と「なりゆき」という言葉に重みを感じます。

吉成 going concernという言葉がありますが、企業にとって、事業を継続していくこと自体がとても重要なんです。良いゲームを作ることはもちろん大事ですが、会社を潰してしまっては元も子もありませんからね。

――これからサクセスが50周年、60周年へと事業を継続してゆくための具体的な方針があれば教えてください。

吉成 基本的にはこれまでと変わりません。ゲームというのはあらゆるIT技術の結晶ですから、ゲーム業界に身を置く者は、IT業界の中でもとりわけ多くの勉強が必要です。会社としては、これまでどおり社員一人一人にスキルアップを促し、常に最新の知識と技術を身につけさせる方針です。もちろん社内で行っているセミナーの内容についてもブラッシュアップしますが、これも今までと同様ですね。

――最新の技術というと、これまでのラインナップにはないVRゲームなども今後は手がけられる予定があるのでしょうか?

吉成 受託開発のオファーがあればやりますが、今のところ、積極的に手を出すつもりはありません。VRはまだまだハードのスペックが低く、画質もボケ気味です。せめて8K並みの性能がないと魅力的なゲームにならないんじゃないかと思いますね。

――最後に、「これだけはぜったいに達成したい」という夢があれば教えてください。

吉成 それはもう、大ヒットゲームを出すことですね! ずっと大ヒットを出したいと願い続けて40年。そこそこ売れるゲームはコンスタントに作ってきましたが、大ヒットまではまだ達成してません。これだけは必ず実現したいと思っています。

――楽しみにしています!  

今年40期目を迎えたサクセス。 ゲームクリエイターのユートピアを目指します。

 

吉成社長の最後のつぶやき(50)

『約1年に渡って続いたこのインタビューブログも、これが最後。アメリカのテレビドラマ「24」を見ながら、主人公ジャック・バウアーよりも、俺のほうが上をいっている、とつぶやいていたのは10年以上も前のこと。ゲーム作りもゲーム会社の経営も本当に面白い』