人生のコツ(4)
日本も捨てたものじゃない
――トランプ大統領誕生の影響で、世界各国で移民排斥や保護主義の流れが目立ってきました。日本もこれから混迷の時代を迎えるのではないかと先行きを不安視する声もあるようですが、吉成社長はどう思われますか?
吉成 専門家ではないのでざっくりとした雑感ですが、マスコミが悪く煽りすぎなんじゃないでしょうか。実際にはGDPが増えて景気が上向いていますし、数字的な面から言えば、いま日本の経済は世界でいちばんマシなほうですからね。
――そういうポジティブな要素が報道されることはあまりないですよね。
吉成 報道がちょっと偏っているような気がします。日本の銀行の財務体質は世界一で、いまや外国の企業にお金を貸せるのは日本の銀行くらいです。アメリカもヨーロッパも、そんな余裕のある銀行なんてほとんどないですから。
――アメリカの政策転換によってTPPもどうなるかわからなくなってきましたが、日本は国際競争に勝ち残っていけるのでしょうか。
吉成 日本はものづくりが得意ですから心配ありません。世界中、誰だって良いものが欲しいですから、このグローバル化の時代に、高品質な日本の製品と競争しなければならない外国のほうが、ある意味かわいそうですよ(笑)。
――品質はともかく、価格競争で後手に回ってしまうという可能性もあるのでは? 一昨年、インドネシアでの高速鉄道建設の受注競争では価格の安い中国に敗れ、大きな話題となったことがありましたよね。
吉成 負けたとは言い切れないのではないでしょうか。インドネシアの高速鉄道は今も着工すらできていませんし、中国国外で中国の高速鉄道が走っている国はまだありませんから。そもそも中国で走っている高速鉄道も中国の自前ではなく日本の技術で作られたものです。中国が独自に改良した車両は事故を起こしたり、不備が見つかってリコールされたりしており、中国製への安全性への信頼は揺らいでいるようです。その点、日本の新幹線は長い運用実績を持ち、安全性も技術力もトップレベルですから、特に高い安全性が求められる交通インフラのジャンルでは有利だと思います。
――信頼性という面では日本に軍配があがりますね。
吉成 新幹線に限らず日本製の製品は、あらゆる国で評価が高いんです。日本が苦手なのはロケットとジェット機くらいのものでしょうね。
――国際競争を怖がる必要はないということですね。
吉成 はい。日本が経済面で落ちぶれるという可能性は、ほかのどんな国よりも少ないと思います。とはいえ経済悪化の要因がまったくないわけではありません。いちばんの問題は人口問題でしょうね。
移民もいずれ同化する
――今のところGDPは緩やかに増えていますが、少子高齢化がさらに進んで労働人口が減り続ければ、状況が悪化するのは避けられませんからね。世界的に移民排斥の傾向が強まっていますが、人口減少を食い止めるためには、日本はもっと移民を受け入れるべきではないかという意見も耳にします。
吉成 僕はもう少しくらい移民を入れてもいいんじゃないかなと思いますね。治安悪化を恐れている人もいるのでしょうが、日本に来た外国人はそのうち日本に染まっていきます。サクセスでもいろんな国の人を採用していますが、不思議とみんな日本風になってます(笑)。
――「郷に入りては郷に従え」ということで、努力しているのでしょうね。
吉成 うーん、意識的に努力しているのか無意識に染まっているのか・・・。昨年訪れたオーストラリアやニュージーランドには中国からの移民がとても多かったのですが、彼らは同胞である中国からの観光客を嫌ってましたからね。「あいつらはルールを守らない!」って(笑)。
――それは染まってますね(笑)。
吉成 たとえ短期間では完全に染まりきらなくても、長く住んで世代が進めば同化していくでしょうね。かつて中国大陸や朝鮮半島から日本に渡ってきた渡来人の子孫だって、とっくに区別がつかなくなってるわけですから。
――移民をめぐって世界各国で混乱が起きている今、移民の受け入れには慎重な姿勢が必要なのでしょうが、それでも過剰に悲観的に考えるすぎることはないように思えてきました。
吉成 難しい問題ですから時間はかかるでしょうけど、この先日本では介護の問題もますます深刻になってきますから、現実的に考えて、介護施設や病院での人手不足解消のためにも移民受け入れの議論は避けては通れないと思います。
――ここ数年、海外からの観光客が劇的に増えていますし、2020年には東京オリンピックも控えています。日本に来て、日本を好きになって、日本で働きたいと思ってくれる人が増えるといいですね。
吉成 基本的に日本人は真面目で、何事にもルールを守り、格差も少ないので、けっこう住みやすいし働きやすいと思うんです。じつはこういう国は意外と少なくて、たとえば韓国では大手企業に入れたひと握りの人間以外はなかなか豊かになれないし、中国では共産党員以外は成功できません。ですから、たとえ国策として反日を掲げている国でも、活路を求めて日本に来たいという人はたくさんいるんですよ。日本にも改善すべき問題はたくさんあり、不平不満もあるでしょうけど、いちど外国で暮らしてみたら日本がどれだけ良い国かを実感するんじゃないかと思いますね。
吉成社長のつぶやき(49)
柔道には随分とのめり込み、結果を残した吉成社長だが、さっぱり続かなかった趣味もあるらしい。 『楽器を演奏できるようになりたくて何度かチャレンジしてみたんだけど、どれも挫折しちゃったんだよね。高校生のときに買ってもらった安いギターは難しすぎて途中で諦めたし、ずっと後になって「一五一会」っていうギターみたいな楽器を見つけたときは、ギターより簡単に弾けるという理由で手に入れたんだけど、やっぱりダメだった(笑)。で、ハーモニカならいけるだろうと頑張ってみたんだけどそれも上達せず、カスタネットにチャレンジしたのが最後。何か一つくらい楽器を演奏できたらなあって思っていたけど、もう諦めたよ(笑)』
2017年6月2日