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業界の問題、あれやこれや(3)

下請けの立場が弱すぎる!

――これまで日本のゲーム業界の問題点をいくつか伺いましたが、海外では事情が異なるのでしょうか? 吉成 アメリカでは、ゲームがヒットしたときに、関わったスタッフや下請け企業に見返りの報酬があるのが当たり前です。ところが日本のゲーム業界ではそういったインセンティブの制度がほとんどないんですよ。これも日本の良くないところですよね。   かつてテレビゲームの一時代を築いた『インベーダー』を開発したゲームクリエイターの西角友宏さんが、当時もらったボーナスは他の社員と変わらなかったというエピソードは有名ですが、今でもそういった状況はあまり変わってません。   ――スタッフや下請け側にもメリットが用意されていれば、仕事の意欲が上がりそうです。 吉成 アメリカだと、たとえ大手企業と下請けの子会社という関係であっても、開発する現場が大きな力を持っているケースがとても多いんです。日本ではそういったケースはかなり特殊で、「メタルギア」シリーズを開発したゲームデザイナーの小島秀夫さんのスタジオとコナミの関係がいちばん近かったかもしれませんね。まあ、いろいろ問題があったとは聞いていますが(笑)。   ――日本でもそういった取り組みをしている会社はあるんですか? 吉成 サクセスの取引先の下請けさんとの間では「たくさん売れた場合にはロイヤリティをつける」という契約を結ぶことが多いです。でも、うちが受託している仕事の発注元にそういった契約を持ちかけると「そんな契約とんでもない」「前例がない」と、にべもなく断られるケースは少なくないですね。   ――サクセスが発注元と下請け、両方の立場で仕事をされているからこその、対等な目線を感じます。 吉成 うちの場合、取引先の企業だけでなく、社員にもインセンティブを与える制度を取り入れています。ヒット作が出ると、そのプロジェクトや部門ごとに営業利益の何パーセントかを報奨金として支給するという仕組みです。  

インセンティブを導入

――大ヒットを作ればそれだけボーナスも大きくなる、となれば社員のモチベーションは相当高そうですね! 吉成 まあ、ボーナスでやる気の出る人とそうでない人っているんですけどね(笑)。プログラマーだろうがデザイナーだろうがプランナーだろうが、ゲーム会社の人間っていうのは、けっこうサラリーマン気質の人も多いですから。ただ、成功したときにちゃんと見返りがあるような制度があれば、日本のゲーム会社ももうちょっと元気になるんじゃないかなと思ってます。   ――最近では、国内産でもPS4のビッグタイトルがいくつか発売されましたが、やはり売れているタイトルは海外の作品が多いという印象です。やはりスタジオや開発会社が力を持っている海外のほうが、元気があるのでしょうか。 吉成 PS4ほどの高スペックなプラットフォームになると、グラフィックの性能がアップしたぶん、ソフトの開発にはお金と時間がかかりますからね。ファミコン時代と比較すると、コストは何倍、何十倍にも膨れ上がっているため、事実上大手の会社しか大作は開発できないという状況になってます。PS4の主要なタイトルはほとんどがアメリカ製ですが、大きな資本で大掛かりにやっているんです。   ――そういった違いも大きいのですね。 吉成 映画産業に似てきていますね。アメリカ国内には映画の大きなマーケットがあるでしょう? それだけでなくヨーロッパやアジアなど、海外にも配給して全世界で上映できるという環境が整っています。だから、1作に100億以上の製作費をかけるようなタイトルがごろごろあるんです。 ゲームもそれに近いところがあります。特に家庭用ゲームに関して言えば、アメリカはヨーロッパを含めて日本の4、5倍のゲームユーザーがいて大きなマーケットを形成しているので、それだけ投資できるお金も大きいんですよね。日本はアメリカと比較するとマーケットが小さいので、開発にお金がかかるPS4のソフトではどうしても遅れをとってしまいます。   ――ことPS4のソフトとなると、日本の開発会社ではなかなか太刀打ちできそうにありませんね。  
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『おさわり探偵小沢里奈』の開発を委託したビーワークスとインセンティブ契約を結んでいたことから『なめこ栽培』が生まれ、双方に大きなメリットをもたらした。
 

吉成社長のつぶやき(29)

「なめこ栽培」はDS版「おさわり探偵小沢里奈」のスピンオフ製品だったという。 『DS版「おさわり探偵小沢里奈」の開発を委託していたビーワークスという外注先から、スマフォへの移植の提案があったんです。スマフォ版「おさわり探偵小沢里奈」の売上が今ひとつだったことから、その販促用のアプリとして作ったものが「なめこ栽培」で、それがヒットしたから、サクセスにも予想以上のロイヤリティー収入が入ってきた。移植した「おさわり探偵小沢里奈」がヒットしていたら、「なめこ栽培」は生まれていなかった。ヒットの法則?、ヒットってのはどれも運だね(笑)』

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