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こんなのアリ!? 仰天事件簿(3)

嗚呼、勘違いで損害賠償!

――これまでのお話を伺っていて、契約を結ぶ際には十分な注意が必要なのだなと痛感しました。 吉成 ちょっとした確認不足や思い込みが致命傷になりかねませんからね。そういったミスで、うち自身が権利侵害をしてしまったこともあります。そのときは、裁判沙汰にまでもつれ込んでしまいました。   ――法的に訴えられたということですか? 吉成 その通りです。著作権を侵害したとして訴えられたのは『みんなの将棋』という作品でした。初心者が将棋のルールから学べるソフトなんですが、当時の日本将棋連盟会長だった米長邦雄さんに協力を仰いで作った商品です。これは、米長さん監修のPC版将棋ソフト『米長邦雄の将棋セミナー21』を下敷きに作った商品なんですが、そのパブリッシャーだった会社から損害賠償を求められたんです。   ――『みんなの将棋』は2002年発売。『将棋セミナー21』は2000年に棋泉というパブリッシャーから発売されて、絶版となっていますね。 吉成 本来であれば何の問題もないはずでした。ところが当時、米長さんは著作権に関する大きな勘違いをしており、それを我々は見落としてしまった。   ――どういうことでしょう? 吉成 米長さんは実力と知名度を兼ね備えたトップクラスの棋士でしたから、将棋に関する関する多くの著作物を出していました。その殆どがゴーストライターによるもので、米長さんは、その原稿を監修する、というやり方だったんです。こうした場合、著作権は米長さんだけでなくゴーストライターにも発生するんです。ところが米長さんは、自分が「著者」として出した作品の著作権はすべて自分にあるものと勘違いしていたのです。当然、『米長邦雄の将棋セミナー21』も米長さんが自由に使っていいものと思い込んでいました。  

災い転じて

――そう聞くと、ずいぶん大胆な勘違いのようにも感じますが、将棋の世界、しかも第一線で勝負に明け暮れている一流の棋士ともなれば、そういった知識に疎いのも無理もないことかもしれませんね。 吉成 そうなんです。いざ訴えられても、彼はずっと納得がいかないと憤慨していたくらいですから(笑)。最終的には一定の和解金を支払うことで決着しましたが、それでもあまり納得がいっていないようでしたね。   ――それでも無事に解決できてなによりでしたね。 吉成 裁判中は大変なこともありましたが、ずっと米長さんと2人で裁判所通いをしていたものだから、彼とはすっかり意気投合して、お友達になってしまいました(笑)。それが縁で、のちに将棋連盟から将棋界のIT化についての相談を受けて、オンライン将棋サイトの立ち上げをお手伝いすることになりました。今でも将棋連盟が運営する『将棋倶楽部24』のサポートをしています。
第4回02『みんなの将棋』パッケージ写真
騒動の元になったソフト。
 

吉成社長のつぶやき(15)

米長邦雄氏といえば棋士としての活躍はもちろん、色々なエピソードも数多く残されている。 『米長さんとお付き合いが始まって間もなく、「吉成さんは、友達だから」って台詞をよく会話の中で使うんですよ。あんな有名人にそんなことを言われて悪い気はしないよね。それが僕だけでないことは容易に想像がつくんだけど、彼の人脈の多さの理由だね』

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