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コンシューマーへの挑戦(4)

「いままで」と「これから」を見極める

――コンシューマー機自体の性能や特色だけでなく、各企業の方針や体質によっても、ゲームの作りやすさは変わるものなのですね。

吉成 当時の印象的なエピソードがあります。あるとき、アスキーの役員から「ソニーのプレイステーション、セガのセガサターン、任天堂のニンテンドー64のうち、どれが成功すると思いますか?」と聞かれたことがあったんです。 それに対して僕は「セガサターンが先行するかもしれないけど、最終的にはプレイステーションが勝って、任天堂はダメだろう」と予想を立てました。

――ピタリと当てましたね。

吉成 ええ。理由はいくつかあります。セガはアーケードのヒット作をけっこう持っていてファンもついていたから、そういったタイトルを移植することで大きなアドバンテージがありました。 任天堂は、メディアがCDではなくロムカートリッジだったんですよ。ロムカートリッジは読み込みのスピードが速いからすぐに立ち上がるという利点があるんですが、作るのにお金もかかるし、納期に1カ月くらい時間もかかってしまいます。 ソニーは、メディアがCDだから早く作れるし、小数ロットにも対応できます。しかも、開発ツールがとてもスマートで、値段もリーズナブルだったし、いろんなライブラリが用意されていました。  

プレイステーションの台頭

――ところで、最小ロット数というのは、プラットフォームごとにそれほど大きく違うものなのですか?

吉成 たとえばロムカートリッジを採用していた任天堂の場合、問屋さんからたいして注文が集まらなくても決まった数を任天堂に作ってもらうしかありません。そのソフトが売れようが売れまいが、任天堂は最初に発注した数が売上として立つから儲かりますが、売れなかったぶんはメーカーがかぶることになります。その点CDであればロット数は細かく設定できるので、メーカーとしてはリスクを減らすことができます。 結果的にプレイステーションが一気にサードパーティーを増やし、当然、ゲームタイトルの数も増えて、成功をおさめたわけですね。

――こうやって具体的に理由を説明されると、納得できますね。

吉成 ところが、そういう予想を立てる人間は、当時、業界では少数派でしたね。客観的な情報を積み上げていったら、簡単に予測はできるはずですけど、当時は「そうは言っても任天堂が絶対に一番だ」いう人が多かった。

――それだけ圧倒的なシェアを誇っていましたからね。

吉成 環境やルールが変われば、有利不利の条件も変わるものです。100メートルの金メダリストがフルマラソンでも金メダルを取ることはあり得ません。  

吉成社長のつぶやき(8)

スーパーファミコンの開発機材は当時の価格で1000万円以上もしたそうで、参入したくても二の足を踏んでしまう会社も多かったのではないだろうか。 『ファミコンの開発機材もそりゃあ高かったけど、うちがアーケードゲームのオペレーター業務をやっていた頃だって、どこのメーカーも1000万円を超えるようなコンピューターを使って作っていたわけです。とうてい手が出せるはずがないと思ってたんだけど、あるとき風向きが変わったんです。当時アーケードの基板にはZ80っていうCPUがよく使われていたんですが、そのZ80のプログラム開発ができる開発機材が、129万円で発売されたんです。それが、開発を始めることができた大きな理由の一つです』

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