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吉成社長が影響を受けた4人のビジネスマン(1)

ビジネスマンとしての吉成社長を形作ったのは、多くの「出会い」だったという。
その中でも特に大きな影響を受けたというのが、これから紹介する4人のビジネスマンだ。
天才的な頭脳、商機に対する嗅覚、他人を鼓舞する力・・・。
彼らの突出した才能を目の当たりにした吉成社長は、その力を少しずつ自分の中に吸収して会社経営に活かしてきた。

 

いちばん最初の上司は、とんでもない人だった!

――吉成社長が一人のビジネスマンとして、そして経営者として影響を受けた方についてお話を聞かせてください。

吉成 「この人がいなかったら今の自分はいないな」と思う人が、4人います。性格も経歴もさまざまですが、彼らからは本当に大きな影響を受けました。その一人が、大学入試後にアルバイトとして入った会社で出会った篠澤達男さんです。僕は、英語教材を取り扱うブリタニカの一部門であるウェブスターという事業部で完全歩合制のセールスマンとして働き始めました。そのときの上司が篠澤さんです。彼は、その後ブリタニカの営業部門でトップにまで登りつめた人で、非常に優秀なセールスマン、そしてセールスマネージャーでした。

 

――ブリタニカでの営業のお仕事は、たしか4年間ほど続けられたのでしたよね。

吉成 そうです。僕は一浪して大学に入ったのですが、家庭の事情もあって入学前からアルバイトを始めました。それがブリタニカというアメリカの会社で、そこにはすべての新人セールスマンに短期間で研修を施すプログラムがあって、新人セールスマンは全員が「スタンダードトーク」という営業トークを叩き込まれます。

外資系の営業には大抵こうしたマニュアルが存在していて、「ごめんください」から始まって、商品の紹介の仕方から購入を渋られたときの切り返しまで、訪問先でのあらゆる状況を想定した対応方法が網羅されていました。丸暗記さえしておけばどんなド新人だろうがそこそこに結果が出せるというとても優れたものでしたから、初めての営業でも何とかなりました。

 

――1セット数十万円もするような高額商品を十代の若者が売りまくったというのですから、マニュアルというのは非常に効果的なのですね。

吉成 マニュアルの出来・不出来は売り上げを左右する重要なファクターだとは思います。ただ、同じマニュアルを使っていても、ほとんど商品が売れずにすぐに辞めてしまうセールスマンは大勢いましたから、万能というわけでもないんです。僕はブリタニカにいた時代、トップセールスマンであった篠澤さんの姿を見て、また自分自身の体験をもって気づいたことがいくつかあります。そのひとつが「セールスとは確率である」ということです。

 

たくさんの人に会えば、それだけたくさんの商品が売れる

――その「確率」というのは?

吉成 簡単に言うと「たくさんの人に会えば、売れる数もそれに比例する」ということです。もちろんセールスマンにはある程度の販売テクニックが必要ではありますが、じつのところ「1件の成約までに何人のお客さんと会ったか」という数字は、腕のいいセールスマンもそうでないセールスマンの間にそこまで大きな差はないんですよ。

 

――えっ、そうなんですか!?

吉成 意外に思いますよね(笑)。売れるセールスマンとそうでないセールスマンの違いがどこで生まれるかというと至極簡単で、単純に会っているお客さんの総数が違うんです。たくさんの商品を売るセールスマンは、それだけたくさんのお客さんに会っているということなんですよ。これはどんな業界にも概ね同じことが言えます。たとえばトヨタ、日産、ホンダなどの自動車のシェアは、そのまま各自動車メーカーの営業所の数や抱えているセールスマンの数に言い換えることができます。事務機器や生命保険の営業でも同様で、如何にセールスマンを多くもつか、如何にに多くの見込み客に会うかが、業績を左右するいちばんのキーになるわけです。

 

――なるほど、単純明快ですね。商品を売るには会って会って会いまくるしかない、と。

吉成 そうです。ただし、会った上で話ができなければ意味がありません。訪問したときに門前払いをされずに商談にこぎつけられるかどうかはセールスマン次第。結果を出せないセールスマンは、せっかく会えても話を聞いてもらえずに終わっちゃうんです。

 

――話を聞いてもらえるかどうかは、さすがに確率というわけにはいかないのですね。

吉成 だからこそセールスマンはお客さんにアプローチする方法を考えるんです。たとえば「ごめんください」と直接訪問する方法もあれば、まず手紙を書いてから電話をかけるという人もいるし、直に電話をかけたり、誰かの紹介をもらったりと、やり方はさまざまです。

どんな方法でアプローチをしようかと知恵を絞るのが、セールスマンのいちばんの仕事なんです。僕は身近に篠澤さんというトップセールスマンがいたので、非常に参考になりましたね。

 

サクセスが「多作」にこだわるワケ

――吉成社長はブリタニカを辞められたあとも幾つかの会社で営業マンとしての実績を積まれていますが、これは「売れる商品の数はお客さんと会えた回数に比例する」という法則に気づいたことで営業の醍醐味にハマったのでしょうか?

吉成 セールスの確率に気づいたことはセールスの仕事を続ける上で役には立ちましたが、会社の経営に関わるようになってからも支えになっています。サクセスは創業時からずっと多作にこだわっていますが、これは「たくさん作れば、そのぶん当たるゲームも多くなるはず」と考えたからです。

 

――そういう理由があったのですね。

吉成 ブリタニカ時代、僕は確率のほかにももう一つ、仕事の成果を上げるうえで無視できない要素に気づきました。それはモチベーションです。

 

――いわゆる「根性論」ということでしょうか?

吉成 ちょっと違います。 僕がアルバイト入社するよりずっと前のことになりますが、ブリタニカのセースルマンが殺人を犯してニュースになったことがあるんです。当然ブリタニカの商品がまったく売れなくなってしまったのですが、そんなときにもかかわらず、相変わらず高い売り上げをキープしていたセールスマンがいました。それが篠澤さんです。

 

――吉成社長の上司だった方ですね。

吉成 彼はセールスマネージャーとして数百人の部下を率いる立場にいましたが、僕は4年くらい在籍していたため、直接声をかけられたり教えを受ける機会も多かったんです。

ある時、ブリタニカのあまりにも強引な営業手法が日本消費者連盟から訴えられ、かつての殺人事件のときと同じように全国でブリタニカの商品が売れなくなりました。この時僕は、彼の凄さを実際に目の当たりにすることになったのです。

 

――1970年の、いわゆる「ブリタニカ商法」と呼ばれて社会問題となっていたときのことですね。

吉成 そうです。連日のように新聞やテレビで報道されて悪評が広まっていましたから、新規の契約は取れず、成約後のキャンセルが相次いでいました。このときにも篠澤さんが率いていた事務所だけが、日本で唯一、相変わらず売り上げをキープしていたんですよ。

 

モチベーションが結果を左右する

――詐欺商法として訴えられているさなかに従来通りの売り上げを達成し続けるとは、にわかには信じがたいのですが・・・。

吉成 そりゃそうですよね(笑)。なにか特別なカラクリがあるのではと思われそうですが、そういったことは何もありません。僕のいた事務所ではセールスマンのモチベーションが高かっただけなんです。
「いくら熱心に営業したところで、お客さんからはどうせネガティブな反応しか返ってこないだろう」と思って営業すれば、お客さんからはその通りの反応が返ってくるものです。ところが不思議なことに「世間でどんな悪評が立っていようが関係ない」というポジティブな意識で営業すると、ちゃんとポジティブな手応えが返ってくるんですよ。そして、部下のモチベーションを上げてポジティブな意識を持たせることにかけて、篠澤さんの能力はずば抜けていました。

 

――なるほど。たしかに根性論とは少し違いますね。

吉成 篠澤さんは商品にまったく興味のない相手だろうが、経済的に余裕のない相手だろうが、「喜んで買いたい」という気にさせてしまう凄腕のセールスマンでした。人を元気付ける話術、いわゆるペップトークの達人だったんです。どんなに意気消沈していた部下でも、彼の話を30分、1時間と聞いているうちにみるみるやる気が漲って、張り切って次の営業に飛び出していくほどでした。

 

――人を乗せる天才ですね。

吉成 他人をモチベートするのがセールスマネージャーの仕事であり、セールスマンの仕事なのですから、その意味では超一流でした。社会人としてのスタート時に篠澤さんと出会ったことで、仕事の成果はその仕事に関わる人間のモチベーション次第で大きく変わるものなのだということを強く実感しました。

 

――全国でまったく売れない状況の中で唯一結果を出したということが、それを端的に証明していますね。

吉成 あのときの経験から、自分や他人の気持ちをポジティブに保つことの重要さを肌感覚で学びましたね。

 

ブリタニカのセールスマニュアル。これを1から10までそのまま実行した。

 

吉成社長のつぶやき(39)

本当に訪問した数がそのまま営業の成果につながるのですか?

『レストランを開業しようとすると、人通りの多い場所を探すでしょ。山奥や田舎の畑の真ん中にお店を開いてもお客は来ないから。新宿や渋谷の駅前に店を出すことができれば、料理の味が多少悪くても、接客マナーが今ひとつでも売上は上がるよね。営業は足の使い方ひとつで、田舎でお店を出しているようにもなるし、人通りの多い場所にお店を出しているようにもなるから』

プロってどんな人?(7)

専門性の高い分野にも意外に多い「シロウト」

――サクセスは海外のゲーム展示会には出展しないのですか。

吉成 残念ながら海外で展開できるコンテンツが今のところありません。可能性のあるコンテンツが持てた時には、当然出展を検討します。しかし、海外でゲームのサービスをする上で、家庭用ゲームの場合は、海外のパブリッシャーと契約するか、自社で支店を出すことが必要でしたが、モバイルやオンラインゲームはその必要がなくなりました。まさにゲームの世界は今やボーダレスです。

 

――販売促進の方法については如何ですか。

吉成 マスメディアへの露出にあたっては広告代理店からの提案を受けることが多いのですが、最近ではうちの社員の発案で、ニコニコ動画やYouTubeといった動画配信サイトを使った番組配信なども試しています。

 

――ウェブコンテンツ作りにも積極的に取り組んでいますね。

吉成 インターネットというメディアではあらゆる人や組織が情報を発信でき、その中身次第ではすさまじい人数が集まってきます。どんな大企業のコンテンツだろうが、おもしろくなければ見向きもされません。うちの番組は今のところ苦戦しているのですが、集客力=アクセス数を増やすためにはそれにふさわしいやり方があるはずです。「狙っているターゲットに適切に届けるためにはどうすればいいか」という、マーケティングの基本中の基本を現場の社員に考えさせる機会だと思って許可しましたが・・・。さて、どうなることでしょうね(笑)。

 

――インターネットは比較的新しいメディアとあってノウハウが完成されていない面があり、まだまだ手探り状態ということですね。それに比べると、マスメディアを利用した宣伝であればこれまでにも慣れていらっしゃるでしょうし、広告代理店が蓄積した膨大なデータやノウハウを活かせるので、効果を見込みやすいということでしょうか。

吉成 普通だったらそう考えますよね。ところが電通や博報堂といった日本を代表する広告代理店をはじめ、本当にプロフェッショナルな広告マンというものに、僕は、あまりお目にかかったことがないんですよ。宣伝の費用対効果とか、どんな方法を取ることがその企業にとって効果的なのかを知らない広告マンが9割といったところですね。

 

――9割!? 失礼ながら、すこし大げさでは……?

吉成 アハハ、本当にそんなものですよ。広告代理店の担当者から「1ページ広告を出さないか」と打診されたとき、「一部当たりの費用はいくら?」って質問して、答えられる人がいないんですから(笑)。

広告の掲載費というのは新聞や雑誌ごとに異なり、金額自体はプライスリストを見れば一目瞭然です。でも、そのプライスリストに載っている値段が妥当なのか、それとも高いのかを評価するには発行部数を見るしかありません。テレビコマーシャルの場合は、視聴率です。

 

コスト感覚、どうなってるの!?

――そういったケースが多いとなると、広告を出す側もよく勉強しておかないといけませんね。

吉成 本当にそう思います。なぜここまで強調するかというと、じつは僕自身もかつて明細も見ずにめくら判を押してしまったことがあり、苦い思いをした経験があるんですよ(笑)。10年ほど前に「クイズ!日本語王」というDSのソフトを出したのですが、これはTBSで放送していた同名の番組を元にしたゲームだったので、テレビコマーシャルを打つことにしたんです。費用は一千数百万円という、テレビコマーシャルとしては格安の予算だったのですが、そのうち一千二百万円もの予算を映像制作費として使っていたことが後でわかったんです。となると、波代(CMを流すための電波料)はわずか数百万円しか残りません。それではちょっとしかテレビに出せないのですから、宣伝効果も何もあったものではありません。

 

――せっかく作ってもほとんど放送できないのでは、CMの意味がありませんよね……。

吉成 そのCMは大手広告会社に依頼していたのですが、大手といえども広告予算の使い方を理解しているとは思えませんでした。

当時、ゲームで使う15秒の映像の制作費は安ければ100万円ちょっとというところでしたから、予算内で効果を上げるためのやり方はいくらでもあったと思うんですよ。実際、細かい明細を持ってこさせたら「プロデューサー料80万円」「サブプロデューサー料70万円」から始まって、はてはお弁当代に20万、無名の外国人タレントの出演料に40万円も計上されていたのですから(笑)。

 

――リアルな数字を知ると、また衝撃的ですね。

吉成 思わず「この弁当、ちょっと俺んところに持ってこい」って言っちゃいました(笑)。その後、先方の制作現場の人間と部長が謝罪に来たので、試しに視聴率やCM1回あたりの費用対効果とかの質問をいくつかしてみたのですが、誰一人として答えられませんでした。つまり、広告宣伝に関してまったくのど素人だったわけです。ただ、広告代理店だけじゃなく、ゲーム会社の宣伝広報の担当者もそんなレベルの人が多いように思います。おそらく「ゲームのプログラムが組めない」「絵も描けない」「ゲームの企画もできない」という社員が消去法で営業や宣伝広告を選ぶというケースもあるのでしょうが、選んだからにはその分野のプロを目指すという自覚を持って努力するべきで、どんな業界でも同じです。

 

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手痛い経験となったテレビCMの商品はこちら。

 

吉成社長のつぶやき(38)

件のテレビコマーシャル事件のあと、ちょっとした顛末があったという。

『あのあと、「迷惑をかけたお詫びに」といって大手広告会社から新聞の広告枠を無償で提供されたんだけど、媒体は日経新聞を含めた数紙で、計算してみたらなんと当時の予算の半分以上の金額だった。広告会社の売上の中身は一体どうなっているのかな、と思った。それに、3大紙の読者はゲーム広告のターゲットじゃないんだよね(笑)』

プロってどんな人?(6)

東京ゲームショウで何をすべきか

――東京ゲームショウなどの展示会に行くと、新技術を使ったゲームをいち早く試遊したりデモンストレーションを見たりと楽しい体験ができますが、その技術がいつごろスタートしたものなのかは深く考えたことがありませんでした。

吉成 一般ユーザーのお客さんにお祭り感覚で楽しんでいただける場ですからね。ただ、出展側にとっては、東京ゲームショウとは本来、自社商品やサービスのプロモーションの場として、あるいはゲーム販売、BtoB、BtoCへの場として活用するべきイベントです。ところがうちの社員を含め、そこをはきちがえているゲーム業界人は昔から多いような気がします。

 

――サクセスは前回の「東京ゲームショウ2016」でどんなブースを出されたのですか?

吉成 ゲーム商品の展示と物販です。じつはこういう場での物販って、会社の業績にはたいしたプラスにならないのですが、ゲーム制作の現場の人間はなぜかグッズ作りや物販をやりたがるんですよね。お店やさんごっこみたいで楽しそうだからかな(笑)。

 

――ファンサービスの面を重視したのでしょうね。

吉成 じつのところ売り上げとしては微々たるものですし、これがサービスになっているのかどうかも正直疑問です。現場の人間がやりたいということで許可しましたが、せっかくのゲームの展示会で「物販」という、ある意味楽な選択をする思考にはちょっと引っ掛かりを覚えますね。

 

――経営者視点で見ると物足りないということでしょうか。

吉成 はい。知恵を絞ればもっと有効にビジネスに結びつけられるやり方が見つけられるはずなのに、そういった創意工夫を怠るようではビジネスマンとしては失格です。せっかくゲームショウに出かけても、ともすれば一般客みたいな感覚でいろんなゲームを試遊して「ああ楽しかった!」と帰ってくるだけの社員がけっこういるんですよ。ゲームの作り手として、意識が低すぎますよね。

 

――自社の商材を展示する側としても、他社の商材を見て回る側としても、新しいビジネスに繋げようという意識が必要だということですね。

吉成 その通りです。だって東京ゲームショウには、ミドルウェア等を開発している中小企業から海外のゲーム会社まで、これまで取引のない企業もたくさん出展しているわけですからね。いろんなゲームを楽しんで回るのはもちろん大切ですが、面白いコンテンツを見つけたときに「ライセンス契約をして日本でサービス提供はできないだろうか」「この開発ツールを自社でも役立てられないか」と思い立ったら、すぐにブースの担当者と商談ができるのですから、その機会を活用しない手はないじゃないですか。実際、僕自身もゲームショウでいくつものビジネスをまとめまてきました。

 

まずは目的を意識しよう

――東京ゲームショウは、一般客向けの華やかなプロモーションが話題になりがちですが、実際に足を運んでみると、専門的すぎて一般客には何がなんだかよくわからないようなブースもたくさんありますもんね。

吉成 展示会に出展する目的は企業によってさまざまです。たとえば大手企業なんかはしっかりお金をかけてビッグタイトルの新作を発表したりしますが、これはさまざまなメディアが取り上げてくれるという宣伝効果があるため、理にかなっていますよね。またゲームの専門学校であれば、ゲームショウに出展しているという実績そのものが学校のアピールになり新たな学生の獲得に効果があります。ゲームショウの出展にはそれなりに費用がかかりますし、CESAによる審査もあります。実際に一流企業なのかどうかはさておき、ゲームショウに出展することで知名度を上げたり、ブランドイメージを上げることができるわけです。

 

――やり方を間違えなければ、かけた費用ぶんの効果を生み出すことはできると?

吉成 出展の目的をきちんと意識していればそうそう間違うことはないはずです。しかし、僕からすると的外れなお金の掛け方をしているように感じる企業も多いんです。たとえば、メディアに注目されてもいないコンテンツがいくら一般客向けのプロモーションにお金をかけたところで無駄に終わる可能性が高いですよね。さらに、出展の前後に発売するタイトルであればまだいいのですが、東京ゲームショウは年1回の開催なので、そうそうタイミングが合うとも限りません。本当にもったいないですよね。

 

――そのあたりの見極めが重要なのですね。

吉成 大手企業のやっていることを中小企業がやみくもに真似をしても意味がないんです。それぞれの企業の規模や特性に合ったふさわしい使い方があるのですから、企業同士の情報収集・情報提供の場として最大限に活用すべきだと思います。

 

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国内外のゲーム展示会をどのように活用すべきか、社員たちの課題として常に考えさせている。

 

吉成社長のつぶやき(37)

東京ゲームショウには自ら足を運ぶという吉成社長。じつは気に入らないことがあるらしい。

『毎回、出展企業の代表者を集めたCESA主催のパーティーがあるんだけど、かならず経産省のお役人がしゃしゃりでてきて挨拶するわけ。経産省の役人がゲーム業界に果たした役割なんてのはゼロなのに、出てくるなって言いたいね。イベント自体はいいんだけど、それが気に食わない』

プロってどんな人?(5)

紙媒体を薦める意外なワケとは!?

――現在ゲーム業界を目指している人たちは専門学校などで日々最新の知識を学んでいると思いますが、ほかに勧めたい勉強法はありますか?

吉成 単純なようですが、人に会って話を聞くこと。そして本や新聞を読むことです。

 

――たしか、サクセスには書籍購入補助という制度もあるのですよね。

吉成 はい。以前にもお話ししましたが、我が社の行動指針の一つに「本を読み、常に学ぶこと」という項目があり、社員には新聞や書籍の購読を推奨しています。ただ、新聞離れは若い世代ほど進んでいて、この新聞を読まない社員が半分くらいいますね。

 

――社員の皆さんは仕事柄デジタルに馴染んでいるのでしょうし、情報収集にもデジタル媒体のほうを選んで使いこなしているのでは?

吉成 たしかにデジタル媒体には多くのメリットがありますが、それでも本や新聞といった紙媒体から情報を仕入れることは必須です。

 

――吉成社長が紙媒体にこだわる理由とは何でしょう?

吉成 今はどの新聞も電子版を発行していますし、話題の本であればたいてい電子書籍化もされているので、デジタル媒体でも紙媒体と同等の情報が得られると思いがちです。ところが、その情報を理解して頭に刷り込むという面では、紙媒体のほうが圧倒的に効果的なんですよ。

その理由のひとつには、一読できる面積の違いがあります。単純に考えて、スマホの画面でスクールせずに読める情報量と新聞を広げた状態で読める情報量では、圧倒的に後者が多いでしょう? 紙媒体の新聞なら、目に飛び込んできたたくさんの情報の中から必要なものをピックアップするのも、重要度別に整理するのも簡単です。

 

新聞をどう活かすか

――アナログ媒体かデジタル媒体かにかかわらず、新聞を読む習慣自体がないという人は30代40代にも増えています。テーマがはっきりしている書籍と違い、新聞はどう読んだらいいのかわからないという人も多いようですね。

吉成 専門書で深く勉強するのはもちろん必要です。でもそれだけでは視野が狭くなり、世の中の流れにはついていけません。僕たちのような仕事をしている人間はそれじゃダメなんです。

毎年、新しい技術についていけずに多くのゲーム会社が廃業していってますが、いつの時代でも「新しく主流になった技術」というのはその何年も前からスタートを切っているものです。新聞を読んでいればそれらの情報はたいがい出ているのですから、技術の萌芽を見逃すということはまずありません。社会構造の変容についても同様のことが言えます。

 

――時代を先読みするためには、新聞を読むことがもっとも適しているということですね。

吉成 その通りです。たとえば今話題になっているAI、機械学習、ディープラーニング、IoT、ブロックチェーンといった技術だって、昨日今日でパッと出てきたわけではなく、既存の技術が5年も10年もかけてどんどん発展してきたものです。となれば、今ある技術のうちのどれが将来メジャーになっていくのかも容易に想像がつくし、予想ができていればその対応も可能になります。

 

――新聞の読み解き方をマスターすれば、あらゆる仕事に通用する大きな武器になりますね。

吉成 ええ、間違いありません。

 

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どのキュレーションサイトよりも優れたキュレーションサービスは新聞。

 

吉成社長のつぶやき(36)

10年後の世の中がどうなっているのかなんて、新聞を読んでいてもあまり想像がつきません・・・。

『誰でも9割くらい当たる予想があるんですよ。同業の新しい会社ができたときに、「あの会社、生き残れると思います?」なんて質問をされることがあるんだけれど、何時も「上手くいかないでしょう」って答えればいいんです。そこが暫くして倒産すると「当たりましたね!」って驚かれるんだけど、1年で業界から消える会社は統計的に1割だから、10年続く会社の確率も1割、予想が当たって当たり前(笑)』

プロってどんな人?(4)

勉強は必須条件

――サクセスでは積極的に外部セミナーに参加する社員が多いそうですね。

吉成 社会人たるものスキルアップのための自己投資を惜しむべきではありませんが、会社からも必要に応じて費用を補助しています。ただ「勉強しろ」と言うだけではなく実際にサポートすることで、社員たちも積極的に取り組んでくれていますね。

 

――それとは別に、社内でも勉強会が開かれているのだとか。

吉成 各部門やチームごとに自主的な勉強会を実施していますし、社内セミナーも開いています。うちは平均勤続年数が8年とゲーム会社にしては長く、ベテラン社員が多いので、そのメリットを生かしてベテラン社員にオリジナル講座を作らせているんですよ。

 

――専門技能を教えるための講座を自前で作るのというのは、なかなか大変なことだと思います。しかもベテランの時間を通常業務以外につぎ込むわけですよね?

吉成 これもまた重要な仕事です。それに、人に教えるのって、じつは一番自分の勉強になるんですよ。いざ他人に教えるとなれば、自分の中でちゃんと整理がついてないことを発見したり、再整理する必要がありますからね。そういう意味では、社内セミナーは受講する人間よりもむしろ教える側のスキルアップにつながっていますね。

 

――講師は何人くらいいらっしゃるのでしょう。

吉成 5、6人いて、それぞれが各ジャンルのエキスパートです。

 

――社内セミナーを受講するのは新人の方が多いのですか?

吉成 年齢も部署の壁もありませんから、それこそベテラン連中も受講していますよ。一口に技術者と言っても、一人ひとりがすべての工程をカバーしてるわけではありません。どんな人にも知識が抜けている分野はありますから、その欠けたところを埋めるためにもこうした社内セミナーを活用していますね。

 

――準備にもそれなりの時間を要するわけですから、教える側も教わる側も気が抜けませんね。

吉成 こういった手間を煩わしいと嫌がる人もいるかもしれませんが、少なくともサクセスでは、そういう発想をする社員は「できない人材」と判断します。たとえ優秀であっても、面倒だからという理由で自分を成長させる機会を棒にふるような社員には、いつ辞めてもらってもかまいません。

 

そんな意識で大丈夫!?

――技術職以外の方もやはり社内で勉強会などをなさっているのでしょうか。

吉成 プランナー向けの社内セミナーはありますが、総務やマーケティングなど職種によって勉強する内容がまったく異なりますから、個人で自主的に勉強するケースもあります。社外のセミナーを受講したりハッカソンに参加する者もいますし、感性を磨くために観劇や美術鑑賞に励む者もいますね。

 

――それぞれが高いプロ意識を持って働いているのですね。

吉成 いやいや、中にはまったく勉強しない者も、自分の勉強不足に無自覚な者もいますよ(笑)。
つい先だっても、うちの社員と話がかみ合わなくて、「○○関係の本を読んだことはある?」と聞いたら、「もちろん!」と胸を張って、「2冊は読みました」と答えるんです。あれには参りました。

 

――常日頃から本を読むようにと社員教育をしている立場からすると、残念な出来事でしたね……。

吉成 会社にはさまざまな人間が集まります。企画力に優れた人もいれば事務能力の高い人もいるし、リーダーシップを発揮するタイプも、逆に縁の下で支えるのが向いているタイプもいます。会社としては、それぞれが能力を発揮できるよう適材適所を心がけていますが、たとえどんな役割を与えられたにしても、プロとしてのプライドを持ってその仕事に取り組んでもらいたいのです。

世の中には「ビジネス書の類には頼らない」というポリシーを持っている人も少なくありませんし、勉強の手段は一つではないとはいえ、本を読んで勉強することは基本中の基本。これからもうちの社員には徹底していきたいですね。

 

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社内で実施しているセミナーの一部は、HP上でも一般にも公開している。

 

吉成社長のつぶやき(35)

若者の読書離れ、新聞離れを嘆く吉成社長。

『人類が他の動物と違って大きく進歩した要因は、文字の発明によって知識を伝える方法を持ったこと、印刷技術の発明によって情報の蓄積ができるようになり、人類の知的レベルを高めたこと。だから、本を読まない人間は動物と同じ。動物にゲームは作れない』

プロってどんな人?(3)

性格は二の次!?

――サクセスの社員には外国人の方も多いと伺っていますが、積極的に外国人を採用する理由とは?

吉成 現在サクセスに在籍している外国人社員は、韓国・中国・台湾・ニュージーランド・イギリスと国籍はバラバラですが、彼らは一様にガッツがすごいんですよ。そういうやる気のある人材を入れると他ののんびりした社員たちも刺激を受けて、社内全体が活気づきます。

 

――正確な意思疎通ができないなどの問題は起こりませんか?

吉成 もちろん言葉や文化の違いから仕事がスムーズに進まないことはちょくちょくあります。でも、そこをカバーすべくお互いにコミュニケーションを取ろうと奮闘するでしょう? そういった苦労や努力をすること自体が社内にいい影響を及ぼしているのを僕は実感しています。外国人を敢えて採用している大きな狙いはそこにありますね。

 

――日本でゲームを作ろうとわざわざ海を渡ってきたくらいですから、ハングリー精神もすごそうですね。多少のハードルがあっても精力的に克服してゆきそうです。

吉成 ハングリー精神だけに限ったことではないのですが、どこかとんがったところがある人間のほうがおもしろいじゃないですか。うちには他にも色々なマイノリティー社員もいますが、そういう個性的な社員は往々にして優秀ですね。おもしろい発想を持ってるし、優れた提案もいろいろ出してくれます。

 

――個性的な社員がたくさんいらっしゃるのですね。

吉成 ええ、変わり者が多いです(笑)。クリエイティブな仕事って個性が必要ですからね。

うちは採用のときに学歴・年齢・性別・国籍・性格をいっさい問わないのでいろんな社員が入ってくるのですが、なかには協調性がなかったり、個性的過ぎて扱いづらいというタイプもいます。困り果てた社員が「もっと性格の良いやつを採用してくださいよ」なんて不満をもらす社員もいるんですが、「だったらお前も採ってないよ」って返してます(笑)。

 

差がつくのはあっという間

――サクセスでは技術職の採用に独自の技能テストを実施しているとのことですが、ゲーム業界ではテストを行わない会社も多いそうですね。

吉成 中途採用の場合はゲーム業界の経験者がほとんどですから、ある程度の実力が担保されていると考える会社が多いのでしょうね。しかし技術の進歩は日進月歩です。常に新しい知識を取り入れている人といつまでも古い知識に頼っている人を「経験者」ということで一括りにすることはできません。

 

――これまでのお話でも継続して勉強していくことの大切さを繰り返し強調されていますし、社員にも勉強熱心な方が多そうです。

吉成 社員にも口を酸っぱくして言ってますからね(笑)。

たとえば歯医者さんにかかったとき、当たり外れを感じたことってけっこうありませんか? 医師免許などの国家資格は、一度取得してしまえばよほどのヘマをしない限りは一生続けていけますから、何十年も勉強しない人も多いんです。だけど歯の治療法というのは次々と新しい技術が出てくるでしょう? それを習得するためのセミナーがまた高額なのですが、高い授業料を払ってセミナーを受け続けて自分の知識と技術をアップデートしていくのが本当のプロの姿勢なんです。でも、どんな業界でも真に「プロ」と呼べるような人間というのは、じつは限られているんですよ。

 

――たしかに上手な歯医者さんと下手な歯医者さんって、ものすごく差がありますね。ベテランの先生には経験があり、若い先生には最新の知識や技術があるとなると、どちらを選ぶべきか迷うところです。両方を兼ね備えていればベストですよね。

吉成 ゲームクリエイターも同じです。経験の長さは関係なく、勉強しているエンジニアとそうでないエンジニアでは仕事のスピードも質もぜんぜん違いますよ。プログラマーの場合は特にその傾向が顕著で、うちでいちばんできる人間といちばんできない人間では10倍くらいの差がありますね。

 

――10倍といったら、相当な差ですよね!?

吉成 実際、できるプログラマーなら1日で終わらせてしまう仕事も、できないプログラマーに任せると10日経っても完成しません。勉強していないプログラマーは稚拙で効率の悪い方法で進めるので、それくらいの差が生まれてしまうんですよ。うちの社内ではそれくらいの差だけれど、ゲーム業界全体で考えるともっと大きな差があるはずです。

 

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プログラマー試験。受験者はC、PHP、JAVA他一番得意な言語を選択。

 

吉成社長のつぶやき(34)

サクセスでは外国人の社員による英語講座も行っており、吉成社長も熱心に受講しているらしい。社内での評判はどうかと尋ねてみたところ・・・。

『それが受講者の数がぜんぜん増えないんですよ。講師に「受講者を集めるために何かしてるの?」って聞いたら、「社内メールで告知してます」って言うんですよ。受講者を集めるまでが講師の仕事なんだから、社内メールで効果がないことが分かったら、さっさと別の手を打てばいいのに。僕が「自分の仕事を自分で作れ」っていうのはそういうこと。なにも大きなプロジェクトを立ち上げろっていうことじゃなくてね』

プロってどんな人?(2)

「がんばります!」は必要ない

――新卒採用と中途採用の社員の割合はどれくらいですか?

吉成 うちでは新卒が3分の1、中途が3分の2といったところです。中途採用の社員は、前職もゲーム会社であることがほとんどです。日本では毎年ゲーム会社の1割が廃業していますから、技術を持った人はゲーム業界内をぐるぐる巡っていることになりますね。

 

――すでにゲーム業界で経験を積んでいる中途採用と比べ、新卒の社員を一から育てるには時間や手間がかかりそうですね。

吉成 社会経験ゼロの新卒社員にいきなり大きな仕事を任せることはできませんが、うちには多くのラインがありますから、ゲーム専門学校で学んできた新卒社員はすぐにプロジェクトに参加させ、経験を積ませることができます。ですから新人の育成が特に大きな負担になるということはありませんね。強いて言えば「こんな作品を作りたい」とか「こういうプロジェクトに携わりたい」という目標を明確に持っている新卒社員はほとんどいないので、そこは中途採用に劣る部分だと言えます。

 

――「ゲームを作りたい」という意欲はあれど、具体的にはまだうまくイメージできていないと?

吉成 はい。でも、それはそれでいいんですよ。たとえば大学に入る時に「どの学部でどんなことが学ぶことができ、将来どんなふうに役に立つのか」を理解したうえで専攻を選ぶ高校生なんてほとんどいないじゃないですか。下手をすれば大学の先生すらそんなことわかってません。偏差値で選んだ無難な大学に入るというパターンが多いはずです。大学入試の時点で明確な人生プランを立てている高校生がいないのと同じように、会社だって新卒で入社した時点でそこまで求めたりはしません。ただ「良いゲームを作りたい」という意識だけはしっかり持っていてほしいですね。

 

――常にその意識を持っていれば、自ずと成長して具体的な目標も生まれますね。

吉成 ゲーム会社の使命は良いゲームを生み出すことで、そのためには社員一人一人が良い作り手に成長する必要があります。いわゆる「クソゲー」が生まれる原因は、作り手がクソだからにほかなりません。だから「できるだけ早く一人前のクリエイターになりたい」という意欲を持つ社員をゲーム会社は求めています。いつまでたっても企画書の1本も出さずに言われたことだけを無難にこなしているような社員は必要ありません。

 

――ゲームの作り手の中には「どんな仕事を指示されても全力で頑張る」というタイプもいるのではないですか?

吉成 「頑張る」ということを日本人の美徳のように考える人も多いと思うのですが、僕は、頑張ること自体に価値を感じません。社員たちにはいつも話しているのですが、無能な人間にやみくもに頑張ってもらうことほど会社にとって迷惑なものはないんですよ。職種に限らず、社員として大事なことは「どれだけ頑張るか」ではなく、事に当たって必要な情報を集め、段取りを考えて仕事に取りかかることです。

 

大口を叩くくらいのほうがいい

――ゲーム会社に入ったからには、自分の企画したゲームを手掛けたいという望みを誰もが持っていると思います。ことゲーム企画の提案に関しては、熾烈なアピール合戦になりそうですが。

吉成 社員たちが「こんなゲームを作りたい」「これは自分に任せろ」と言ってくれることが、社長にとってはいちばん楽ですね。もちろん商品開発には時間もお金も必要ですからある程度の勝算がないとGOサインを出せませんが、提案者のやる気に押されて承認してしまうこともあります。

 

――熱意や勢いって重要なんですね。

吉成 ゲームっていうのは複数の人間がチームを組んで作るでしょう? だから時には空中分解しそうになることもあるのですが、誰かひとりでも狂ったような人がいればなんとかなるものなんですよ(笑)。「四の五の言わずに俺に任せろ!」というくらいがいいんです。人の顔色を見ながら調整を重ねるような人間ばかりが集まっても、ろくなゲームはできませんからね。

 

――一歩間違うと、とんでもない作品ができてしまいそう……(笑)

吉成 これほど変化のスピードが速い時代に「これを作っておけば手堅い」なんてゲームは存在しません。ヒットを確信して出したゲームだって半分以上は外れるのですから。ゲームビジネスというのはある意味ギャンブルなんです。どのみち博打なら、気概のある人に任せるほうが博打しがいがあるでしょう? そういったタイプの社員がもっと増えてほしいですね。

 

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1つの棚に約250タイトルが収納されている。この中でヒットした作品は1割。

 

吉成社長のつぶやき(33)

サクセスが開発するタイトル数は、年間約30本。企画を通すのは並大抵のことではなさそうだ。

『僕が出す企画も多いから、社員の企画で採用されるケースは実際にはもっと少数。社員は270人いるけど、企画を出すペースなら1対270でも負けないよ(笑)』

プロってどんな人?(1)

業種を問わず多くの企業人と接し、社内でも人材の育成に力を注いできた吉成社長だが、時には、彼らのプロとしての姿勢に物足りなさを感じることもあるという。ゲーム業界のみならず社会人として求められる資質、そして取り組むべき課題について語ってもらった。

 

ゲームスクールで何を学ぶ?

――サクセスの創業から40年、これまでいろんなタイプの社員がいらっしゃったと思いますが、昔と今で変化を感じることはありますか。

吉成 少子化という流れの中で、日本人全体の知的レベルが下がっているように感じます。ゲーム業界に限っていうと、コンピューターゲームの黎明期には非常に高い専門知識がなければクリエイターにはなれませんでしたから、当時と今を比べると、ゲームクリエイターの基礎的な学力の差は歴然です。

 

――つまり、クリエイターの質が下がってきていると?

吉成 いいえ、一概にはそうは言えません。昔と違って今は優れたツールがたくさん開発されていますから、ゲームクリエイターを目指す上では学力の差などほとんど問題になりませんから。さらに日本にはゲームの専門学校も多く、卒業後すぐに戦力になる優秀な人材が毎年コンスタントに輩出されています。ゲームの専門学校がこんなに多いのは世界広しといえども日本くらいですよ。

 

――授業料を払って専門学校に入るくらいゲーム作りに対する意欲が高いのですから、会社でもバリバリ働いて貢献してくれそうですね。

吉成 ところがそう簡単にもいかなくて、与えられた仕事は黙々とこなすけれども仕事を仕切ったり人を引っ張っていくのは苦手という人が増えているんですよ。ゲーム業界ではもともとこういったタイプの人間が多く、部長や課長を任せられる人材が少ないことが悩みの種なんです。うちにも「仕事が増えて大変だから管理職にはなりたくない」という社員がいるので、ちょっと危機感を覚えますね。

 

「やりたくない」からやめちゃうの?

――技術者としての能力とゲーム会社の社員としての適性はまた別ということですか。逆に考えると、ゲーム業界で働くことを考えている人は、専門スキルを磨くだけでなく同じ組織のメンバーに意識を向けることを心がけると、就職の大きなアドバンテージに繋がるかもしれませんね。

吉成 統率力は一朝一夕に身につくものではありませんが、もうすこし積極性を持つ人が増えるといいなと思います。

以前、あるゲーム専門学校の先生から聞いた話なのですが、その学校のテニスクラブで部長を決める際に、なかなか引き受け手がいなかったそうなんです。らちがあかないので、担当の教師が見込みのある生徒を指名したところ、その生徒は素直に首を縦に振らず、最終的には「クラブを辞めさせていただきます」となったとか。

 

――そこまで嫌がるというのはすごいですね。

吉成 冗談みたいな話ですよね(笑)。人を統率するという経験で得られるメリットよりも、生ずる責任や煩わしさといったデメリットのほうが大きいと判断したのでしょう。たとえ苦手であっても必要とあらばリーダーシップをとれる人を企業は求めているのですが・・・。

 

――せっかく経験を積めるチャンスなのに、もったいない気がします。

吉成 日本の社会全体にそういう消極的なタイプが増えてるのかもしれません。たとえば大手総合商社であっても、海外赴任を嫌がる社員が多いそうです。僕ら団塊の世代は、海外で仕事することに憧れた世代なので、そういった風潮に驚きを覚えますが、今の若い人たちには海外に対する憧れは無くなっていますね。

 

――採用する側からすると、頭の痛い問題ですね。サクセスの入社試験では社長が面接を行って最終判断をされているそうですが、特に重視するポイントはありますか?

吉成 うーん。採用を決めるのはほとんど直感かな。

 

――直感ですか? けっこうアバウトですね!?

吉成 僕は日本のゲーム業界の中でいちばん多く面接をしてきた男ですから(笑)。志望者には新卒でも中途採用でも独自の技能テストを行っているので、一定の条件をクリアした人材が入ってきます。その上で僕が判断を下すのは、テストの数値や履歴書以外の部分になります。短い面接時間で「使える人材か、否か」という点を見極めるには、経験からの直感がものを言いますね。

 

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過去サクセスに応募し面接した人数は数千人。

 

吉成社長のつぶやき(32)

就職活動がうまくいかない人に、何かアドバイスは?

『ある元社員から「書類選考で落とされて、なかなか面接にこぎつけない」という相談を受けて履歴書を見せてもらったことがあるんだけど、受からない理由は簡単、本人のアピールポイントが的外れで無駄な内容が多かった。ひょいひょいっと添削して渡してやったら、すぐに就職が決まったよ。まずやるべきことは企業がどんな人材を欲しているかを把握すること。それがわかれば、自分が何をアピールすればいいかは自ずとわかるでしょう』

業界の問題、あれやこれや(5)

スマホゲームの隆盛と問題

――日本国内ではスマホゲームは元気ですが、PS4をはじめとするコンシューマーゲームは勢いがありませんよね。コンシューマー事業から撤退するゲーム会社もあって寂しい限りです。

吉成 かつてアーケードからコンシューマーへとゲームの主流が移行した時代、ゲーム市場はコンシューマーソフトだけで年間5000億円は超えていました。今やコンシューマーはものすごく縮小しましたが、じつは、スマホゲームやオンラインゲームなどの隆盛でゲームのマーケット自体はどんどん大きくなり、ゲーム市場全体ではすでに1兆円を超えてるんですよ。

 

――短期間でとんでもない成長を遂げたゲーム会社が何社もありますもんね。

吉成 一方で、消えてゆくゲーム会社もたくさんあるわけですが、それはこれまでも話したとおり、ゲーム業界のメインストリームを捉え損ねたり、新しい技術のキャッチアップができていない会社が多いんです。新しい技術といっても、すでにある程度の技術や知識を持っている技術者であれば習得に時間がかかるものでもないのですから、そういった理由で廃業に追い込まれるのは残念ですよね。ゲームに関わる人間は、継続して勉強していくことが宿命です。

 

――スマホゲームは手軽に始められることもあり、爆発的なヒット作もたくさん生まれていますが、その一方で課金がらみの問題も大きく取り沙汰されるようになりました。

吉成 1つのタイトルで年間何百億も稼ぐゲームがごろごろあるわけですから、社会的な影響も大きいですよね。スマホゲームは基本的には無料でプレイできるものがほとんどですが、ガチャやくじといった課金要素に際限なくお金を注ぎ込むユーザーもいます。そして、こうしたユーザーがゲーム収益の大部分を担っているわけです。

 

――レアアイテムを入手できるかもしれないと思うと、「10連ガチャなら多少は元が取れるし」「あと1回」「もう1回だけ」と、ついついガチャを回してしまう気持ちもわかります。

吉成 ガチャ自体、射幸心を煽るシステムになっていますからね。いまは入手確率の表示が義務付けられていますが、規制が入るまではそれもなかったので、いっそうその傾向は強かったと思います。自分で稼いだお金であればまだしも、保護者のお金で決済することを理解していない中高生くらいの子供が無制限にお金をつぎ込んでしまったのも当然だったのではないでしょうか。

 

究極の理想は・・・

――ユーザーを保護するために業界全体で規制を作っても、規制をかいくぐるようにして課金にまつわる新たな問題が次々と起こっています。無料のゲームを運営するためには、どうしてもガチャやくじなどに頼らざるを得ないのでしょうか。

吉成 ほとんどすべてのゲームでガチャを導入していますが、過度の課金システムを設けなくても大きな収益を上げているゲームもありますし、ガチャのない良質なゲームもありますよ。うちもガチャのないゲームをけっこう出していますし、この手の問題は起こっていません。

 

――課金なしで、どのように収益を上げているのでしょう?

吉成 一つは広告ですね。僕は、ゲームビジネスの究極の理想というのは、広告のみで収益をあげることだと思っています。テレビで言うとNHK方式ではなく民放方式ですね。

 

――課題も多そうですが、いい方向に進むように期待したいです。

吉成 何十万円も課金するほど夢中になれるというのはそれだけおもしろい作品なのだろうし、そんなゲームがあるというのは、ユーザーにとってはある意味幸せなことかもしれません。でも、ユーザーは数多あるゲームの中から好きなものを選択できるわけですから、有料・無料にかかわらずいろんなゲームに目を向けてみてほしいですね。

 

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docomoで展開している[スゴ得]

吉成社長のつぶやき(31)

スマホの問題といえば、「ポケモンGO」は世界中でいろんな問題が起きたことも記憶に新しい。日本でも総務省や消費者庁から、歩きスマホやながら運転をしないよう異例の注意喚起がなされたが、吉成社長は特に興味がない様子だった。

『大ヒットして瞬間的に熱狂はするだろうけど、たぶん一時のブームで終わるんじゃないかな。とくに日本人はすぐに飽きそうだしね』

業界の問題、あれやこれや(4)

変な規制が多すぎる

――せっかく高スペックなプラットフォームを開発しても、日本ではそのスペックの高さが足かせになってソフト開発がなかなか進まないというのは、なにか皮肉なものを感じます。

吉成 高いスペックはゲームの可能性を広げはするけれど、ゲームのおもしろさはそれだけで決まるものではありません。たとえ高画質ムービーや迫力のあるサウンドが贅沢に使われていたって、つまらないゲームはつまらないでしょう? PS4の作品よりおもしろいPS1の作品って、たくさんあると思いますよ。

 

――初代PS3機ではPS2用のソフトもPS1用のソフトもプレイできたので選択肢が豊富でしたが、PS4ではPS1〜PS3のソフトとの互換性がないので、仮にPS3でおもしろそうなタイトルを見つけてもPS4用にHDリマスター化がされない限りは、PS4で遊ぶことはできないんですよね。ちょっともったいない気もします。

 

2Dだからダメ!?

――どんなゲームを開発するかというのは、パブリッシャーは自由に決められるのですか?

吉成 基本的にはゲーム機を製造販売するメーカーに企画書を提出し、承認を得る、というプロセスがありますが、なかには馬鹿馬鹿しい規制もあります。
以前、『上海 万里の長城』というゲームを、いろんなプラットフォームでシリーズ展開したのですが、そのなかにはPS1版もありました。ところが版権元であるアクティビジョンがそれをアメリカで売ろうとしたところ、却下されたんです。

 

――日本では問題なかったのに、ソニーのアメリカ法人はダメだと判断したのですか?

吉成 そうです。しかも「3Dのゲームじゃないから」というのがその理由でした。プレイステーションは、3Dの表現力が過去のものよりも優れているということがひとつの売りでしたから、『上海』のような、ハードのスペックを活かすことができない2Dのゲームはラインナップに加えないというんです。

 

――そういうケースもあるんですね。

吉成 3Dのゲームじゃないから許可しないなんて、馬鹿げた話ですよね。グラフィックが2Dか3Dかというのは、作品の良し悪しには本質的には関係ありません。たとえばアニメだって手書きのセルで作るアニメもあれば、クレイアニメもあれば、フルCGのアニメもありますよね。そういった表現手法の違いをあげつらって判断するなんて、まったく理解できません。

プレイステーションソフトの審査については、日本よりもアメリカのほうが規制が厳しいですね。バグには寛容ですが(笑)。

かって当社では海外で制作されたタイトルを数多く移植して販売しましたが、バグの多さには驚きました。日本のメーカーチェックは厳しいですから、バグが発見されると差し戻されます。品質管理のレベルは、日本とアメリカではレベルが違いますね。

一方、日本は日本にも変な規制も多いのですが・・・。

 

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SCEから発売されたPS版『上海 万里の長城』は、アメリカで販売することができなかった。

 

4本指だからダメ!?

――日本では、4本指のキャラクターが登場するためにプレイステーションから発売できないソフトがあったというお話を伺いましたよね。

吉成 日本では自主規制によって表現を制限されることが多いですね。差別的な意図があろうがなかろうが、文句を言われそうな表現は事前にすべて排除してしまうというのは行き過ぎだと思います。ゲームだけじゃなく、たとえばテレビで通行人の顔にモザイクをかけたりするのも、僕には異様に見えますね。海外では殆どありえませんから。

 

――肖像権や個人情報に関する意識は、欧米のほうがしっかりしていそうなイメージがありますが、そうでもないのですね。

吉成 いくら個人情報の保護といったって、顔にモザイクを入れて放送するような国なんて日本くらいじゃないでしょうか。facebookのアイコンだって日本人はキャラクターとかペットの写真が圧倒的に多くて、海外のユーザーからは不思議に思われていますよ。

 

――ちょっと神経質なのかもしれませんね。

吉成 神経質すぎると思います。先日、ニュース番組である誘拐事件を報じていたんですが、その中で犯人に個人名を特定されないようにするにはどうすればいいかなんてことをキャスターが滔々と説明していたんですよ。その方法というのが、表札を出さないとか、持ち物に名前を記入しないといったことだったので、正直あきれました。ごく一部の犯罪者に対応するために、社会全体が「顔を出さない」「名前を隠す」だなんて、過剰反応もいいところです。

 

日本人はグレーゾーンを気にしすぎ

――難しいところですね。たとえば一人暮らしをしている女性なんかは、防犯のため表札を出さない人も多いと思います。

吉成 どんなことにもメリットとデメリットがありますが、僕はデメリットが大きいような気がします。女性に限らず、最近は表札に名前を出さない人がけっこういるでしょう? そうすると、隣に住んでいる人がどんな人間なのか何時までたってもわからないじゃないですか。近所付き合いがないことは、防犯上の大きなデメリットになると思います。

 

――たしかにそうですね。

吉成 ゲーム作りにおいても、日本特有のこうした自主規制にうんざりすることはたくさんあります。たとえば、うちでは『東京バス案内』という都営バスの運転シミュレーションゲームのシリーズを何作か出しているのですが、このゲームでは街の風景を3Dで全部表現してるんですよ。ところが社員の中には神経質な社員がいて「商標権や肖像権に抵触するかもしれないから、街にある看板をそのまま出すのはまずい」ということで、看板の大半を変更してしまったんです。

 

――よほど企業イメージを損なうような演出をしていなければ、むしろ宣伝になりそうな気もしますが。

吉成 そもそも看板ってのは、見てもらうために出すわけですからね。『東京バス案内』で特定のお店や企業を誹謗中傷する気も宣伝する気もありませんでしたが、街の風景をリアルに再現するのが運転シミュレーションゲームの醍醐味のひとつですなので、そこは変える必要はなかったのではないかと今も思っています。

 

――トラブルを避けるために慎重になりすぎたがゆえの判断だったのでしょうね。

吉成 世の中には白と黒だけじゃなくて、グレーの部分があるものですが、そのグレーの部分も事前に排除しておこうという意識なんですよね。もし訴えられたら戦えばいいだけのことなのですが、こういった過剰な配慮が日本のゲームをつまらなくしている原因のひとつだと思います。

 

吉成社長の今日のひと言(30)

我が家(インタビューアー)の右隣のご夫婦とはしょっちゅう交流があり、左隣のご夫婦とは引越しのご挨拶に行った時すら居留守を使われたのだが、そういえば右隣は表札を出していて、左隣は出していなかったことを思い出した。
『いい人か悪い人かまではわからないけど、挨拶にも出てこないような人とは、お付き合いはしたくないね』

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