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「会社」とのつきあいかた

終身雇用制度が崩壊した今の日本で、働く人はどういう心構えでいるべきなのか?吉成社長は、これまでも繰り返してきたように「自分の能力を磨き続けることの大切さ」を強く説いてくれた。いつ何時でも会社を切り捨てられるくらいの覚悟で準備をしておくこと、それが必ず自分自身を救うという。

 

仕事を優先するな

――吉成社長は趣味である柔道にかなり本格的に取り組んでいますが、社員の方にもスポーツを推奨されているんですよね。

吉成 うちの社員はいくら助成金を出してもスポーツをやりたがらないんですけどね(笑)。まあ、スポーツをするかしないかは置いておくとして、僕はプライベートを犠牲にするような働き方には反対です。会社によっては、健康まで犠牲するような仕事があるようですが、健康を犠牲にする価値ある仕事なんてあり得ません。

 

――社長ご自身も会社の立ち上げ当初に残業や泊まり込みを繰り返した経験があり、その反省もあるのだと、以前伺いました。

吉成 ゲーム開発を始めた頃、月に12回徹夜をした経験がありますね。徹夜仕事の一番の問題点は、徹夜をするとなぜか仕事をやったような気になっちゃうんですよ。集中力を高めてやれる時間なんて限られてるわけですから実際にはすごく効率は悪いのに、夜明けにブラインドを指でそっとめくり上げては「俺は、何て頑張ってるんだ」なんて勘違いするんです(笑)。

 

――頭ではわかっていても、仕事が忙しい時期はプライベートを優先することに罪悪感を覚えてしまうという人も多いと思います。

吉成 仕事だけに生きがいを求めては駄目です。僕は千代田区スポーツセンターで週2回は柔道の指導員として自分の稽古と指導をやっているのですが、社会人の中には仕事が忙しいという理由で休みがちな人もいるんです。そういう人には「仕事を優先しないで、柔道を優先しろ」って言ってます(笑)。

 

――なかなか厳しい指導ですね(笑)

吉成 無茶なことを要求しているように聞こえるかもしれませんが、貯金と同じように考えればいいだけです。「余ったお金を貯金しよう」なんて思っていたらいつまで経ってもお金なんか貯まりませが、給料から自動的に積み立てていくように設定しておけば、否応なく貯まります。時間の管理も同じで、趣味の時間をあらかじめ確保しておいて、残りの時間で仕事をすればいいだけの話です。

 

――定期積み立てくらいの気持ちでいれば、なんとか趣味の時間を死守できそうですね(笑)

吉成 僕がそこまで言うのは、長時間の残業は効率が悪いという理由だけではないのです。じつは僕の弟は、昔、とある有名デパートに就職していたのですが、20年ほど前、景気が悪くなってリストラの嵐が吹き荒れたんですよ。そのとき行われていたリストラの実態を弟の口からいろいろ聞いたのですが、会社が社員を一方的に解雇するわけにはいかないから、辞めさせたい社員をかつての部下の下に配属したり、家族のある社員に転勤を命じたり、店長経験者に受付の案内係をさせたり、とそれは酷いものでした。

 

――悪質なリストラ策がメディアで取りざたされた時期がありましたが、実際にそういう状況に追い込まれたり、目にするだけでもショックでしょうね。

吉成 身も心も捧げ尽くして働いた会社にそんな状況に追い込まれ、首を切られるという話を聞いたとき、自分の人生すべてを会社に委ねるな、と強く思いましたね。

 

本当の意味での実力を備えよう

――終身雇用を期待できる会社が少なくなったいま、誰にとっても他人事ではありませんね。

吉成 どんな会社でも常に優秀な人間を欲しがっていますから、辞めたときに即、あちこちから声がかかるような存在になれば安泰です。うちの社員たちには、会社に対していつでも「じゃあ辞めます」とケツをまくれるようにしておけといつも言ってるんですよ。何かあったとき、唯一身を守れるのは自分の能力だけですからね。

 

――会社に忠誠を誓って「いつまでも置いてください」というよりも、「いつ辞めてもいいんですよ?」と言えるくらいの実力を備えた社員でいてほしいと?

吉成 むしろそういう社員ばかりならサクセスも安泰です(笑)。そのレベルに至るのはなかなか大変ですけどね。

日本はずっとデフレが続いていて、需要に対して供給が多すぎる状態です。世の中にこれだけゲームコンテンツが溢れかえっているなかで、周りと比べて「特別に劣っているわけじゃない」という程度の実力ではまったく役に立ちません。ゲームも並のゲームとかそこそこ良くできたゲームが売れないのと同じです。

 

――ユーザー側からすれば選択肢が多くて嬉しいけれど、コンテンツビジネスをする側からするととても厳しい時代ですね。

吉成 プログラマー、デザイナー、プランナー、職種は何であっても、優秀な人材は引く手あまたです。我々の業界では、新しい技術は次々と出てきますから、常に勉強を欠かさず、必要な情報をインプットしていくことが大切です。インプットの習慣がなかったり、勉強が嫌いという人は、そもそもクリエイティブな仕事には向いていません。

 

――あっという間に時代遅れになってしまいますからね。

吉成 クリエイティブな仕事に限らず、どんな職業にも情報収集はとても重要です。「情報化社会」という言葉はもう何十年も前から使われていますが、昔と比べ、情報の重要性はとてつもなく大きくなっていますからね。いまや時代は「タイム・イズ・マネー」ではなく「インフォメーション・イズ・マネー」。リッチさとは持っているお金の量ではなく、「いかに情報を持っているか」そして「どれほど情報を使うスキルがあるか」ということで決まります。それに気がついている人はまだまだ少ないように思いますが、その意識なくして成功はありえません。

 

――若者に限らず、仕事を続けてゆくうえで肝に銘じたほうがよさそうですね。

 

ここが日本で一番社会人柔道家が集う場所。ここに指導員として週2回通っている。

 

吉成社長のつぶやき(45)

最近、オーストラリアとニュージーランドに旅行に行ったという吉成社長は、その豊かな暮らしぶりにとても驚いたという。

『オーストラリアって主産業は農業と鉱業くらいなのに、中国からの移民で人口がどんどん増えて、一人当たりのGDPはなんと日本の1.5倍。平均賃金は600万円くらいだけど、残業という概念がないので実質的には700万円という。しかも社会福祉がしっかりしてるから貯金の習慣もないらしい。向こうで出会った日本人居住者は、みんな口をそろえて満足している、と言ってたなあ。え、俺? 正直、住みたいとは思わない。だって飯はまずいし、夕方5時になるとお店がぜんぶ閉まっちゃうんだもん(笑)』